我が恩師


何でも、戦前の文部大臣だそうです。
今時の陣笠の順送りなど足元にも及ばない文部大臣だったそうですが、
さすがのおばさんでも、その時代のことはとてもわかりません。

おばさんのお勤めする事務局では、創立25周年のパーティをすることになりました。
一応総理も出席が予定されているし、各閣僚の殆どが出席します。
そのほか、昔偉かった方たちにも案内状をお出しすることになって、
「生存確認」のお電話をすることになりました。

当然課長一人では手が回りませんから、もう、殆ど物故者名簿に載り損ねているのではないか、と思われるような方には、
おばさんのようなペーペーがお電話する事になりました。
まさか、そういう方のお宅でご本人が電話に直接お出ましになるなど考えられませんでしたから(^^ゞ
まずまだご生存なら秘書がいるのが普通ですし、最悪ご家族が出られるはずです。
ところが、何件かめに、その考えられない事が起きてしまいました!!

電話におでになった瞬間、はっ!これはひょっとして?と思ったのです!!
しかし、まさか?という思いがまだありました(^_^;

若き日のおばさん「こちらは口口でございますが、本年創立25周年を迎えまして、そのパーティーにご出席頂けますよう、ご案内状をお送りいたしたく、お伺いのお電話をさせて頂きました」
もう、立ち上がって直立不動です。課長の顔をチラチラ見ます。
課長さんも、自分の掛けていた電話を切り上げて心配そうに見ています。

その方「そうですか、口口ももう25年になりますか。それはおめでとう。」
課長に変わるチャンスを伺いますが、先様はゆったりとよどみなくお話になりますので、お話の腰を折って、
「一寸お待ちください、只今上司に代わります」等と失礼なことは申し上げられません。
だって、本来、目上の方に下っ端から電話を掛けさせて、ご本人が出てから変わるなどと失礼千万なことですから。
その方「私はね、もう大変年を取って、そういう晴れがましいお席は全部ご遠慮しています。どうぞ皆さんによろしくお伝えください。」
きっと、おばさんが年若いチンピラネーチャンだということも声などでお察しの事と思いました。
それでも、偉ぶらず、責任者を出せ、とも言わず、ゆったりと丁寧にお話くださいました。

おばさんが「どうも、ご静謐をお騒がせいたしまして申しわけございませんでした」と申し上げると、
「はい、ありがとう」と静にお電話をお切りになりました。
こちらも、電話を切ると深く溜息が出ました(´∧`)〜ハァー
何時の間にやら部屋中がシーンとなって、おばさんのやり取りを息を詰めるように聞いていたのです。
課長は、よく出来た、よく出来た、と褒めてくれましたが、それどころではありませんでした。
部長まで、「いや、○○さん(おばさんの旧姓)は、大変な人と直接話したんだ。いい経験だ」とニコニコしていました。
それでも、ソレに懲りたか、後の偉い方たちは物故者名簿に載り損ねているのではないか、
と思われる方でも課長・部長がお電話していました(^^ゞ

後日、おばさんは、後輩の女性陣から、
「○○さん(おばさんの旧姓)は、電話に向かって直立不動で話して、最後は、電話に向かって直角のお辞儀をした」
と、笑われましたけど、笑われて結構(^^)v
このお電話一本で、本物の偉い人は、何でもご自分でなさる、と言う事と
本物の偉い人は決して威張らないものだ、ということをしみじみと学びました。

そしてなにより、
あの方のお優しい、噛んで含めるようなお話の仕方――
きっと若い駆け出しの女の子が必死になってお話申し上げるのをお察しになって、
子供に言い聞かせるようにおっしゃってくださったのだと思います。
を忘れる事はできません。

。・゜★・。・。☆・゜・。・゜。・。・゜

この時は、他にも興味深い事がありました♪
物故者名簿に載り損ねているのではないか、と思われる旧財閥系の社長という例がありました。
さすがに、そういう旧財閥系でもあまり古くなると、その会社の役員室や人事ではわからないのです。
でも「それでは△△本館(本社ではなく)の、そういう昔の人を担当している係りにお問い合わせください」
と言う事になるのです。
凄いですネェそういう専門の部署があるのです・・・そこで、殆ど百年分くらいの役員はわかります!!但し本社の!
子会社の役員までは駄目ですけどね(^_^;
でも子会社と言っても、社会的には相当な企業になるのですよ。
本社の役員と、子会社の社長は比較にならないくらい本社の役員の方が偉いんですね・・・(^_^;
企業の縮図を見ました!!