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9月13日(水)
 
玉三郎の舞踊会

いやいや、良かったです!!
綺麗でしたよぉ〜!
「玉三郎の功罪」というのに、歌舞伎役者が綺麗なものだという観念を一般人に植え付けてしまった!
というのがありました。
そりゃ、綺麗でなくてもいい役者というのはいるけれど、
やはり主役張ろうっていうくらいの役者は「見てなんぼ」「見せてなんぼ」ですよ!!

というわけで「雪」
これはあまりにも有名な武原はんさんの舞姿のイメージが強いですからして、超、超心配だったのですよ。
美しさでは負けなくとも、やはり「おはんさん」とじゃまだまだ技量に差があるではないですか!?
モチロン玉三郎が「板に乗せる」んだから、それなりの自信があってのこととは思っていたんだけれど。
それに、今回のプログラム上でも後の二つはもう手に入った演目で、どう考えても
今回の目玉は「雪」でしたから。

でも、観客の開演前のさんざめきがすっとひいて、緞帳が上がって、玉三郎の後姿が現れるや、
全ては杞憂だと思い知ったというか、すべてを忘れて、「雪」の世界に没入しましたね。

いやぁ、後姿の美しさ!
傘の柄から脚の線、着物の裾の流れる曲線まで一気に芯がピンと張っているようで
美しさと緊張感とが凄い舞台から客席に流れ込んでくるのです。
まだ、全曲が流れるように、というまでにはいかないけれど、
ひとつひとつの舞姿はおはんさんにも負けてない。
しかも玉三郎の世界になっているのです。これが凄い!
どうしてもおはんさんほどの強烈な手本があると、それを真似るだけで汲々としてしまうのに
「玉三郎は玉三郎でございます」とにっこり笑うようなあでやかさをきちんと残している。
それが玉三郎の「雪」の世界を構築しているのです。

二番目の「阿古屋琴責」は、もう国立でも松竹座・歌舞伎座でも演じて絶賛された演目。
もっとも、今舞台でこれを演じられるのは玉三郎しかいないわけで、
ま、福助が猛特訓しているだろうけれど、それを舞台に乗せられるかどうかは別の話しでね。
なんたって琴・三味線・胡弓全てが観客に納得できる程度までは弾きこなさなくてはならないから大変。
歌右衛門が女帝でいられたのも自分しかできない、というプライドがあったからだし、
第一あのオールマイテイの鳫次郎でさえやってないんですから。
さすがに、玉三郎嫌いの母も「もう立女形だね、誰も文句はつけられないねぇ」とノタマフ!
ホホホ(^^;

さてさて「藤娘」
これはもう、十八番中の十八番で、なんといおうか、アンコールを先に出したようなもので、
玉三郎の魅力のエスプリとでもいおうか、といつたところです。
ただし藤「娘」には見えなくて、やはり、これ踊るみんながそうなのだけれど、
この舞踊自体が「おぼこ」振りじゃないのだけれど、
 ういういしさより「女盛り」の所作事ですよね。
でもとにかく綺麗で、「雪」と「阿古や」で見せたストイック振りからは想像出きない
可愛さとコケティッシュな魅力に溢れていました。
これも古来からの「藤娘」を求める人達には文句があるところだろうけれど、
これは立派に「玉三郎の藤娘」として構築された作品です!
それと、このセットがよかった!!
劇場の大きさに合わせたらああいうセット組むしかなかったのかもしれないけれど、
それにしても、シンプルで豪華、両面併せ持ったいいセットです。
美術・座間芳松となつている。どんな人なのでしょう??
地方さんたちの衣装も上は普通の紋付だけど、袴は藤色で揃えて統一感があったし、
各所に「玉三郎の目」が光っていて OH!GOOD!

カーテンコール張りの御挨拶があって、一言もしゃべらずに、
それも凄い貫禄と愛敬があって、今ああいう挨拶ができるのは玉三郎くらいでしょう。
(昔、鴈次郎がすごい貫禄たっぷりの無言の挨拶を見せて感動したけどあれ以上でしたよ)
というわけで、満足満足大満足の日でした(^.^)




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