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3月10日(日)

「俊寛」
「十六夜清心」


歌舞伎座に行って来ました。
今月は昼の部の立松和平の新作「道元の月」というのが、「道元禅師七百五十年大遠忌記念」と銘打った売り物なのですが、
私はやはり夜の部の孝玉コンビ―今はそうは言わない(^^ゞ仁座衛門・玉三郎―の「十六夜清心」が見たいのでそちらに。

「夜の部」序幕は、幸四郎の「俊寛」
正式名は「平家女護島」二段目、享保4年(1719)近松門左衛門によって書かれたもので、
「平家物語」や、能の俊寛を素材にしています。

幸四郎の俊寛は、大昔の国立劇場の高校生歌舞伎教室以来なんだけど・・・う〜ん、よくなかったなぁ・・・(^_^;)
あの時(高校生歌舞伎)は、丁度「ビルマの竪琴」と前後していて、
「ビルマ〜」の時には俊寛になり、「俊寛」の時には島村になつてしまうというジレンマがあって、
もう少し時間が経ったらよくなるのかな、と思ったのだけど(^_^;

母などは歌舞伎役者としての幸四郎は買わないけれど、
私は忠臣蔵の寺坂平衛門などは、情があつてけっこうよかったと思っているんだけど・・・今回は・・・(^_^;

まず、背中が若い。且つ健康。
勿論正面は老けてますよ。よろよろよろけて、大変そうです(^^ゞでも、後ろを向くと・・・ねぇ(^^ゞ
確かに、年齢からいつたら、あの時の俊寛は30代半ばくらいなので、今の年齢にしても50歳くらい。
老人とはいえないし、要するに苛酷な自然と食料がないために体が衰弱しているのだから、
そう老けて作ることはない、と言う解釈もあったと思うし、それも一理あるのですよ。
そうじゃないと、妻が清盛の意に添わなかったというのも不自然になるし(清盛だって婆に懸想しないだろうからね)、
都の使者に歯向かうのも、血気盛んな30代、という意味なんだろうけどさ・・・。
それも考慮しても背中が若くて健康体、というのはなぁ・・・?
都に置いてきた妻を思うのも「夫婦でも別れていれば恋だ(ちゃんとした台詞を忘れたけど)」という台詞も、
もう少し老けてやつれていないと心打たれないんじゃないかしら(*^^*)
最後の足摺の場面でも、ナニヤラ元気よくてねぇ・・・(^_^;

主役がこんなんで、後はもうどうにでも・・・と言う感じです(^_^;
千鳥の孝太郎は一生懸命やって入るらしいけれど、可憐さがないし、無駄な動きが多すぎる!?
丹左衛門の美津五郎は昼の道元が大変な出来らしいけれど、それで精根尽き果てたのか?という感じでやる気なさそう(;_;)
瀬尾の左団次はこの役もういつもどおりの手順でしょ、って感じで超マンネリ(^_^;
意外やいつもパッとしない橋之助が成経をちゃんとやつている。
この人は、いつもまじめに手抜きをせずにやる割には、なんとなく何かが足りない風で可哀想なんだけど、今回はまあよかった(^^)
友右衛門の康頼も律儀さが出ていていいんじゃない?

でも、舞台全体に隙間風ヒューヒューと言う感じだったな・・・なんで?

で「十六夜清心」
これは河竹黙阿弥の四幕の世話物で「花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)」という1859年初演のもの。
玉三郎にとっては初舞台ではないけれど、注目を集めた、と言う意味では、この「十六夜清心」の「求女」という役が最初でした。
昭和41年の新橋演舞場、十六夜は今の雀右衛門、清心は玉三郎の義父の勘弥。当時のゴールデンコンビよ♪
見てるぞー!!
でも、当時はただひたすら背が高いのが目障りで、おまけに変声期の真っ最中で、ちっともいいとは思わなかった(;_;)
不明を恥じておりますm(__)m

これは、十六夜と言う遊女に馴染んで女犯の罪を犯して追放された僧侶清心が、十六夜と入水心中しようとして果たせず、
川から上がってお大尽遊びの喧騒を聞き、「しかし待てよ」と悪党に変身して行く、
一方、十六夜も白蓮という遊郭での客に助けられ・・・という筋立てです。
そこに、清心が殺した若者(これが「求女」なんですよ)が十六夜の弟だつたという、
黙阿弥得意の因果話があって、最後は悪党タチの哀れな末路!
と言うことになるのだけど、今回はそこまでは出ないで、取り方に囲まれて、必死に抵抗するところでチョン!ということになっています。

まあ、これも、けっこう薄味といえば薄味なんだけど、要するに風情を楽しむ芝居だからね(^^)
時代は江戸だけれど、舞台は鎌倉で、だから、鎌倉に行くと、今でもこけしに「十六夜」とつけて売っていたりします。

玉三郎も仁左衛門も風情たっぷり、難しいことは言わずに、ひたすら美しい恋人達と、
人生の垢にまみれた小悪党を手馴れた様子で演じています。
白蓮の左団次は、瀬尾より気のいい役のせいか、心持よくやつているようで、見ているほうも気持ちがいい。
こういうのをやると、それなりに貫禄が出るようになったのは大したもので(^_^;

あの「求女」の役を勘太郎がやつています。昼の「道元ー」でもいい役をもらっているようですが、ここでもいい!!
しかし、ごつい(^_^;)「求女」なんだから・・・ねぇ(^^ゞ
女形だってやっているんだから、もう少し柔らか味があつてもいいと思うんだけど(^^ゞ
台詞や所作はいうことないんだけど・・・全体的な柔らか味が・・・顔が大体ごついんだよね。テレビなどでも男っぽいもの(^^ゞ

白蓮女房お藤は秀太郎。まあ無難なところなんだけれど、その昔の宋十郎のお藤が大変によかった!ので、ねぇ・・・(^_^;
下男の杢助が亀蔵で意外やよかった♪
特筆すべきは十六夜の父佐五兵衛(出家して西心)の弥十郎!!
こないだの「源氏物語」の老爺、その前の「伊達騒動」の相撲取りと、やれば大当たりの感があるけれど、
今月も昼の「道元ー」でもいい役がついているらしいけど、ここでも、わずかの出なのにいいんだ、これが(^o^)丿
こういうところで、いい芝居になるかならぬか、という分かれ目になるのですよ。

清元の唄に元・清太郎の延寿太夫が出ていて、立唄なんだけど、恥ずかしい(;_;)
「延寿太夫」を立唄以外に使うことが出来ないなら、立唄に相応しくなるまで、継がせるべきではないし、
実力がないなら「立唄」は遠慮すべきだと思います。

総じて、今月の歌舞伎はちょつと薄味!高かったかな(^_^;






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