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11月26日(水)

能「夜討曾我」
狂言「鬼の継子」

県民の為の能を知る会

解説 堂本正樹
狂言 「鬼の継子」 鬼/野村萬斎 女/高野和徳
能「夜討曾我」 曾我五郎時致/中森貫太
         曾我十郎/五木田三郎
   笛 寺井宏明
    小鼓 幸 正明
     大鼓 柿原弘和
     大藤内野村萬斎

今回は、鎌倉能舞台の主催で横浜能楽堂での公演です。
ここは、私が横浜を離れてからできたところで、私は初見参(^^)
できれば少し早く行って、懐かしの県立音楽堂や青少年センターの周りを歩いてみたい、と思っていたのに、
結局いつものとおり、ギリッチョンで滑り込んでどこも見られずじまいでした。

さて、この横浜能楽堂の本舞台は旧「染井能舞台」という能舞台を復元したもので、
柱や梁は、その古木をそのまま使ったのか大変古色の渋い色艶を出していました。
能楽堂のHPによると

明治8年(1875年)東京・根岸の旧加賀藩主前田斉泰(なりやす)邸に建てられ、
後に東京・染井の松平頼寿(よりなが)邸に移築されて昭和40年まで広く利用されてきました。
関東地方現存最古の舞台で、全国的に見ても8番目に古く、建築史上、能楽史上貴重なものです。

ということです。
一部に二階席が2〜3列ありますが、キャパもちょうどよい見やすい能舞台でした。

解説 堂本正樹

名前だけは聞いたことのある劇作家か劇評家だと思ってましたけど、能楽関係だったのか?
と、思って今YAHOOで検索したら、「能劇の座」という劇団の主催者でもあり演出家でもあるようです。
ちょっと解説は聞きづらかった・・・眠っちゃったのでわかりません(^_^;
おまけに眠っちゃって鉛筆落としちゃったので、メモも取れなかったし・・・(^_^;

狂言 「鬼の継子」 

鬼/野村萬斎 女/高野和徳

最初、パンフも見ていなかったので、「女」が出てきて、萬斎でなかったのでびっくり(^_^;
あ、鬼が主役か・・・と一人でうなづいていたら、その鬼が登場したのはよいけれど、
面をすっぽりかぶっているのにまたびっくり!!
なるほど、狂言だって、面をつけるものがあるんだからそりゃそうだわ、と思いつつ・・・でもなぁ、とブツブツ(^_^;
そしたら、これがうまいんだわ!!
いやぁ、鬼が人間の赤ん坊の愛らしさに夢中になるんだけれど、
結局、鬼の本能として「食いたい」という気持ちが押さえられなくなる・・・けっこう哀しい話なんですよ。
その、鬼が赤ん坊の愛らしさに我を忘れて夢中になるところは、
先日のテレビの特番で「萬斎、子供を初舞台させるの段」でその特訓の様子を見ていたこともあり、感無量。
そして、あやし疲れて赤子を下においてじっと見る・・・沈黙・・・「食いたい!」
この沈黙の間が大変によかったと思う!!
今まで見た萬斎の中で一番よかった(^^)

それと、「女」を演じた高野師もやはりなかなかの人だったらしく、
ちょうど脇正面だったけど、いい位置で、足の運びがよく見える席で、その足の運びの滑らかさにさすが、と思いましたね♪

今日の狂言はよかったです(^^)
ただ、笑うというより、ちょっと考えさせる狂言ですね。

能「夜討曾我」 

曾我五郎時致/中森貫太
    曾我十郎/五木田三郎
  笛 寺井宏明
   小鼓 幸 正明
    大鼓 柿原弘和
    大藤内野村萬斎

これが、よかったんですが、面白かったし、いろいろあったんですけど・・・。

とにかく、今日のオーケストラがよかったんですよ(^^)
お笛はちょっと弱いかな・・・と思ったけど、大鼓と小鼓が、もう絶妙なバランスで、こりゃ大絶賛の前回を越えたか、
と、思って先ほど確認したら、十月の大絶賛囃し方そのものでした(^^ゞ
しかし、このトリオはいいですねぇ♪
それに、十月のときは、ちょっと大鼓が、ほんのちょっとだけ大きいかな、と思ったのだけど、今回はもうGOOD♪

で、五木田三郎師、いいお声ですねぇ!!惚れたぁ〜\(^^)/
まぁ、チョンボ(質疑応答参照↓)もあったけど、存在感もあるし、いやあよかった(^^)
もともとシテ方ですから、これはワキではなくツレになるのですね。

で、シテの貫太師は、今まで女舞ばかり(といっても「井筒」と「梅が枝」だけ(^_^;)拝見して
男は初めてなのですが・・・私は女舞のほうが断然良いと思う。
お声も断然女の謡向きですよね。
もともと美声タイプだと思うし(^^ゞ
そのかわり面をつけない直面(ひためん)でもおかしくない、なかなかの二枚目です(^^)

私が現在能を嫌いなのは、面をつけない直面(ひためん)で、というのが大きいと思うのですよ(^_^;
やはり、面ひとつつけることで舞台全体を異次元にしてしまう、面というのはそういう魅力というか魔力があると思うのです。
それに、↓の質問でも出ましたが、いくら無表情に作っても、人間の生の顔で出す無表情では、
無表情という表情にしか過ぎない、と思うわけです。
それでは、なぜ面をつけるのがシテだけでいいのか、といえば、やはり、能は所詮シテのものだと思うからでもあるのです。
囃し方は別として、極端なことをいえば、
シテがひとり舞台に立って地謡との掛け合いで進めていってもいいわけですし・・・。
と、私は思う。

だから、地謡はけっこう気にかかるんですが・・・その地謡、今日はちょっと立ち上がり?と思ったんですが、
「だんだんよくなる法華の太鼓」で、中盤以降凄くいいんだ、と思いました(^^)
終演後のトイレでも、ほめていらっしゃる方がいらっしゃいました♪

演出も凝っていて、今日の質疑応答のお話でも、あれが通常なのでしょうが、
お能の立ち回りというと、大昔に見た「土蜘蛛」の頼光の立ち回りくらいで、
なんか歌舞伎以上にのんびりおおらかな立ち回りだったと思うのですが、今日は違いました!!
チャリンと刀を交えるし、切られた人は仏倒れで倒れるし・・・最後に五郎が取りこめられて橋掛かりを入るところでは、
四人に引きづられて入るし・・・あれは気合を合わせなければならないし大変そう!!

相狂言は萬斎が祐経の客の臆病者を付き合ってました。
こちらは相手役が新人だったようで・・・ちょっと辛いものがありました(^^ゞ
まあ萬斎師の顔を見せる場だと思えば良いのか、と思っていたら、
やはり主催者もそのようにおっしゃってました(^^ゞ

と、いうわけで、面白いことは面白かったのですが・・・やはり好みの演目ではなかったようです。

質疑応答 中森貫太

あいかわらず、私は、本公演が終わるとトイレにすっ飛んでいって、質疑応答は途中から・・・しかも、今日は劇場のキャパが広い分、
観客も多くて、しかも満員御礼、ということで、二時間休憩ナシの公演の後はトイレも長蛇の列でした(^_^;

で、もう一度入場すると、どうやら、相狂言のやり方についてのお話でした。
今日はメモも取ってないので、まったくのウロ覚なので順不同で中身も自信ないですがm(__)m


回答―せっかく萬斎産に手で頂いたのに狂言のほうでは面をつけてお顔がわかりませんでしたので、
顔を出していただいて、とこちらからお願いしたものです。
大藤内というのは、大体こちらからお願いしてやっていただくものです。
和泉流ではこれは特別の演出になりますが、大蔵流では、これが普通の演出になります。


質問―今日お能をはじめてみたが大変面白く拝見しました。
回答―初めて見る人にはちょうどいい能で短いですし、ここ(横浜能楽堂)でも一時間かかりません。
これが初めてで、「井筒」や「野々宮」を見てしまうと、もうお能は嫌、ということになります。
歌もしっかり歌おうとするとどうしてもゆっくりになって長くなりますのでご覧になる方も疲れますが、
やる方も精神的に疲れます。
今日のような能はやるほうにすると体は大変ですが精神的には疲れません。
でも、こういうのばかりやっていると「井筒」のようなものをやりたくなります。
演じる方にとってやりたい能というのと、ご覧になる方の見たい能とはちがいます

質問―今日のお能は舞台の上で立ち回りがあって切ったり切られたりしましたが・・・。
回答―今日は切られる人が出て切られましたが、一月の忠度などは切る人だけです。幽霊ですから。
こういう現在能ですから、切られる人も出て、どうしても体育会系の人はそういうことをやらされます。
わたしなども若い頃はずいぶん致しました。
そういうところに習いに行きます。
誰にでもできるものではないので、頭に何もつけていませんから、頭を打って大怪我をした人もございます。
そういう人には頼みません。あなたはやらなくていいですから、と。本人も嫌がりますし。
切られ方も二とおりありまして、今日のは「仏だおれ」と申します。あと宙返りするのもございます。
もっと派手だと両方やるものもございますが、そんなに何人も切っても。
歌舞伎ですと、それはそういう型ができていて何人も出て派手になるのでしょうが。

質問―戦いの途中に肩衣を抜いて鉢巻などを閉めなおすところがありましたが。
回答―これはやはり、戦っているうちに肩衣も脱げてしまうだろう、烏帽子も飛んでしまうだろう、
という疲れ果てている様子を見せるわけです。

質問―舞台の上に女性がいらっしゃいましたが
回答―はい。女性です。
あの方は私の姉弟子というより私の師匠の妹弟子になります。
今は観世だけでなく、よその流派でも女性の能楽師というのはいらっしゃって、プロとして活躍していらっしゃいます。
後見というのは大変重い役目でして、特に主後見というのは、シテ以上の格がないとできません。
というより、やったことのある人でなければできません。
何が起こっても、すぐその場で対応できる人、ということですから。
今日の主後見は私の師匠でございます。
今日の女性の後見の方は衣装の着付けが大変上手でいらっしゃるのでいつもお願いしています。
ただ、地謡だけは女性は出ません。どこの流派も女性が○人(十人or20人)揃っている、というところはありませんので。
ゴルフでいえば、レッスンプロといいますか、お稽古をつけていらっしゃる方が多いと思います。

質問―お答えにくいことをおききしますが十郎のとちりに声をつけられたのは
回答―これは後見でございます。
近くの者が、たとえば地頭などがいえばわからないのに、と思われるかもしれませんが、
舞台のことは後見がしきりますので、これがたとえばワキなどでございましたら、そういうこともあるかもしれませんが、
シテ・ツレなどでしたら後見がつけます。
他の者も決して後見の顔をつぶすようなことはいたしません。
今日のあれは忘れたのではなく、せりふの最後を少し変えていた上に、同じような語尾がたくさんあるものですから、
相手に期待してしまったところもあって少し間が空いてしまいました。

質問―お答えしづらいことをありがとうございました
回答―いえいえ、これは多分聞かれるだろうと覚悟してまいりましたから。


質問―面なしで見たのははじめてて表情をどうつけるかということを。たとえば笑うとか。
回答―私たちは表情を出さないように、俗に言う能面のような顔ということで、表情をつける、ということはいたしません。
顔の上げ下げと目を半眼にするくらいはいたしますが。
ですから、私どもの表情の出し方は下手でございます。
乱能にいらっしゃればどんなに表情を作るのが下手かよくおわかりになると思います。
私たちの狂言はちっとも面白くないと思います。

それでは、今年の横浜能楽堂の公演はこれが最後になります。
次回は来年5月のこどもの日です。
一月は鎌倉能舞台のほうで馬場あき子先生の解説で「忠度」をいたします。
本日はどうもありがとうございした。

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あー、今日はホントにメモなしなので・・・大体こんなところだったでしょうかね(^_^;

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