能「谷行(たにこう)」

シテ  梅若六郎
ツレ  観世栄夫
 子方  小田切亮麿
ワキ  宝生 閑
ワキツレ 殿田謙吉・大日方寛・御厨誠吾・梅村昌功・則久栄志・舘田善博
アイ  山本則直
大鼓  國川 純
 小鼓 鵜澤羊太郎
 太鼓  観世元伯
笛   杉 市和


横浜能楽堂の「シテとワキ」シリーズの四回目ということでした。
今回は、シテが脇に回って、というのかな・・・まあワキが主役という感じのお能です。

ですから、宝生閑さん大車輪という舞台でした(^^)
それなりに存在感もあるし、そういう意味では問題ない。
当然直面ですが、役柄も阿闍梨ということで違和感はありません♪

「峰入り修行」をするという阿闍梨が宝生閑氏で、その弟子松若を子方の小田切亮麿くん。
その母がシテで梅若氏。
「谷行」というのは、その峰入り修行の途中に病気になった者は谷へ投げ落としてしまう、という山伏の掟があって、
これを「谷行」と言うのだそうです。

で、今回は、その病気になった弟子の松若を谷行するしかなくて、谷行してしまうのですが、
なんとか蘇生を願って役行者に救いを求めて、伎楽鬼神を呼び出し、その助けによって松若が蘇生する、というお話です。
後ジテはその役行者が呼び出す伎楽鬼神です。

でぇー、脇に回った、梅若六郎氏が、これがまた素晴らしいの\(^^)/
出番はほんの一寸でネェ・・・これでシテ?というくらいなのですが・・・。
まあ、シテはシテとして「シテ・梅若六郎」とプログラムにも書かれていますが、ねぇ・・・。
登場も梅若氏からで、まず最初に出てきます。
それで、ワキ柱ではないけれど、シテ座ではないよね、・・・地謡の前に座ります。
床机に腰掛けて・・・これ、後で阿闍梨と対面する時に座るのですが、足悪いのかな(^_^;
座り方がスムースではありません。あんなぎごちない足のすべらせ方をして座るかな・・・(^^ゞ

でも、凄いのよ!!
とにかく、橋掛かりから出てくる時のオーラと歌いだした時の声!!
震えが来るもの!!
いやぁ・・・なんて人だ!!
ただ、後ジテは、謡いもなくて、面をつけていて、
もう〜橋懸かりをツツツ・・・・と風を切るように滑り出て、舞台上をヒラリヒラリと舞い回るのだけど、
これは梅若六郎か?と思ったりもする(^^ゞ
それほど軽やかで、颯爽としてちょっと痩せてる(^_^;
でもあの橋懸りから登場するときのオーラは余人に真似できないものだと思うので半信半疑なのです(^^ゞ

本日、特筆すべきは子方の小田切亮麿くん!!
何歳?10歳?12〜3歳くらいにはなるのでしょうか?
まず、最初の出から、橋懸りを梅若氏の後を長袴を引いて進んでくる時にビックリ!!
静々と落ち着いて、上体の揺れもない!!
へぇ〜♪とビックリしていたら、謡い出したら、オイオイ子どもの謡いじゃないよ!と思う!

私は「子方」の演目で見ているのは船弁慶の義経だけですから大きなことは言えないのだけれど、
あと、梅若はボーっと出るだけで謡いはなかった、と思うんだけど・・・ナマで見てないから忘れちゃったm(__)m

まあ、確かに時々は子どもの声も入るんだけどさ・・・長く謡っていると、どうしても(^^ゞ
でも、立派に謡です\(^^)/
しかも、病気になって師の阿闍梨の膝に横たわって謡うシーンは、凄い!!
勿論、こないだの山本則俊さんじゃないから、本当に宝生閑さんの膝に頭を乗っけているんだろうと思うけど、
それにしたって、横になった体勢で、あれだけの謡を謡うんですぞ!!
そして谷行されて、作り物の前で装束をかぶせられて寝かされている間、
相当長いのだけれど微動だにしないのです(^^ゞ
いったい、あの子は誰なんだ?!

検索にかけたのだけれど出てないよね・・・当然(^_^;
ただ、去年の11月にも梅若六郎の「海人」で子方を勤めているので、相当仕込まれてはいるのですな(^^ゞ
父親か縁者か、今日の地謡に小田切康陽という名前が見えるので、この人で検索してみたところ、
この方も地方公演などでシテをしたりした記録はあるので、この方の息子さんだろうか・・・凄い!!
とにかく凄い!!
これが能楽師の子どもさんたちの標準だとはとても思えません(^_^;
みんな、この程度は出来ます、と言われたら、ドヒャァ!!だよ(^_^;

歌舞伎で、10歳くらいで「芸」として、大人の鑑賞に堪えられたのは、
今の勘九郎・三津五郎と光輝時代の歌昇、幸二時代の橋之介、ホントに子どもの頃の男寅、
九歳で供奴踊った勘太郎くらいだなぁ・・・
後は親の七光りだけで役がついてチヤホヤされただけですよ(^_^;

亮麿くんだって、特殊な才能なんじゃないだろうか・・・しかし後生恐るべし!!
楽しみだぁ\(^^)/
と、言いつつも、子役で名人、大人で凡人って場合もあるのよ・・・ハッシー&オトラ(^_^;
そうならないでね・・・(^^)
でもさ、こうなると、大人の能楽師諸君、がんばってね(^_^;

本日の囃子方、大変結構でした(^^)V
今日は全員お初の囃子方でしたが、梅若氏とやるんだから、そう変なのは連れてこないだろうと安心していたんですけどね。
観世元伯氏の太鼓を始めて聞きました。大変結構でした(^^)
こういう太鼓を聞くと、囃子方の調子は太鼓で決まる、といのに納得してしまいます♪
それにしても、やはり笛ですねぇ(^^ゞ
今日は、ワキ中心の演目のためか、名乗り笛は陰なんですね・・・あ、こういう時も「名乗り笛」というのかな?
まあ、シテが先に登場するので、そのシテの登場に合わせて陰から吹きます。
それがなんとも言えず良い音色で、静でちょっとうら寂しい感じが漂っていてよかったです♪
こういう作品なので大鼓や小鼓が小気味よく、という演奏ではなく、調子も破調のような、感じの調子が多くて、
最初は冗長に感じました(^^ゞ
でも、やはり、後半調子に乗って来るといいですねぇ。アンサンブルもよくて、どれか一つが耳障り、と言うのがない!
囃子方全員一致で作品を支える、という気合のわかる演奏でした。

観世栄夫氏がツレに出ています。観世では出さない特殊な演出なのだそうですが、
オーラだけはありますが、謡はもう駄目!!
と、私風情に言われては終わりでしょ(^_^;
謡の詞が聞き取れないんですよ・・・最悪!!
とくに、このお役は、謡曲集にも載っていないわけだし、何を謡っているかわからなくては仕方ないです(^_^;
まあ阿闍梨の謡や地謡などで前後の事情から察することは出来ますけど(^^ゞ

そういえば、普段、お能を見ている時は、めったに謡曲集を見たりはしないのですが、
今回は、ホントにはじめての作品だったので、けっこうチラチラ見ていたら、だいぶ違ってましたねぇ(^_^;
いつも見てないからわからない・・・こんなに違うものかしら?

まあ、地謡は、ちょっと迫力にかける気がしました(^_^;
そのぶんワキツレが、大勢出て、それぞれに大変良い声で、謡もさっすが〜♪という感じだったので、仕方ないのでしょうか(^^ゞ

でも、地謡の中に例の「山本順之」氏がいるんですよ(^_^;
どうして?!

そういえば、七月一日の友枝昭世氏の「井筒」は相当な出来だったらしい(^_^;
どうしてもう少し早く気づかなかったんだろうか(;_;)号泣

とにかく見たい!聴きたい!
友枝昭世、浅見真州、山本順之!!!

この梅若六郎を越えているか越えていないか、とにかく聴かなくちゃワッからないものね\(^^)/

最後になりましたが、アイの山本則直氏は大変結構でした(^^)
どうも、やっぱり私は大蔵流のほうが相性がいいらしいです♪
それにしても、良い声で巧い!!
何が違うんだろう?和泉流と大蔵流と・・・違いがわからないのに、こっちばかりが良い、と思うのは嗜好の問題ですかね(^_^;
まあ和泉流の狂言て尾張徳川家の庇護で伸びたそうですから、
私は尾張好みではないのかな(^_^;

と、すると綱吉が愛した喜多流は相性がいいかもねぇ・・・見参望む、友枝氏♪



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