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10月31日(月)


「夜叉が池」

――能と劇の出合い――

梅若六郎   (能)
野村萬歳 (狂言)
小林十市(バレエ)
檀 れい(元宝塚)
英 太郎(新派女形)

そのほか茂山逸平・宗彦、桂小米朝・南光なども出る・・・

えーっとこういう異種ジャンルオールスターものは、ちょつとな・・・と思っていたのですが、
そのわりにはよかった(^^)
但し、やっぱりなぁ・・・という気分もあります。


「夜叉が池」は泉鏡花原作の大変ミステリアスな作品です。

夜叉が池と名づけられた池にまつわる伝説と、ソノ池に棲む妖怪と、
現実の夜叉が池の傍に住む鐘撞夫婦の物語です。
それがまた幻想的な話に魅惑された夫婦で、現実の世界からの訪問者を迎えて、
話が三層・四層になっています。

当然、鏡花好きの玉三郎もやってますし、
最近、長塚圭史率いる阿佐ヶ谷スパイダースもやってます。

まあ、構成・総演出 梅若六郎
演出 中村和徳(宝塚)
となっているので、どのようなバランスで演出したのか・・・このメンバーを使い切る力があったかどうかが疑問(^_^;
出演者としての当然梅若さんはオーラがありますけどね(^^)
誰が企画立てたんだか知りませんけど・・・まさか檀れいさま宝塚卒業記念公演、ということではないでしょうねぇ(^_^;
でもさ・・・はっきり言って其の程度なんですよm(__)m

まず、私がこのチケットGETした理由は、正にそれだったのですm(__)m
檀れい、卒業一発目の仕事が、ナヌ?梅若さんと一緒?
萬斎と出るの?
ヒェー!!行かなくちゃ♪君に逢いに行かなくちゃ〜♪
でー一番お安いお席をGET!4000円也(*^-^*)

まず、オーチャード・ホール三階四列目という席はドンナンカナァ?
と思っておりましたら・・・まあ滑り台ではあるのですが、舞台まるこど見えるのはGOOD♪でございました(^^)v
舞台のセットが見えたとき、先日の「水能」と名づけられた「血の起源」のセットを思い出したんだけど、
あれはまあ平面より下がって水を入れたプール、
今回は階段だったのですが・・・なんというか朝倉流の雰囲気で、過不足なくド〜ンとありました(^^)
お芝居が始まっても、うまく使われていてサッスガの安定したセットでした(^^)
但しカーテンコールは辛かったみたいです(^^ゞ

照明は沢田祐二!これもお馴染み♪
大変綺麗で神秘的です(^^)v

衣装・菊田光次郎ってちょっと聞いたことないな・・・と思って、今検索したら、つかこうへいさんのトコが多いようですね。
後三宅裕司のSETなんかと・・・小劇場関係というか、実力派劇団というか・・・曲者なんだろうな。
夜叉が池の妖怪たちの衣装はよかったけど、萬斎の衣装などはちょっともうちょっと工夫がいるのじゃないか・・・と(^^ゞ
一番よかったのは白雪姫の衣装なので、これは梅若さんの要望が大きかったのかな(^_^;

でー、本題!!

まあ、梅若さんはよかったですが
私としては、今夜の買いは小林十市と英太郎だと思いました(^^)

英太郎も何に出てもとっても良いので、安心して見てましたけど、
能楽界の人たちと落語会の人たちとの橋渡しみたいな感じで、あの人がいなかったら、
随分チープになっただろうと思いました(^^ゞ
まあ、チープでもあったんですけどね(^_^;

小林十市はビックリでした!
世界のヒノキ舞台に立っていた、というのはこういうことなのね、というオーラです。
しかも、こちら側の人間を淡々と演じていました。
この役は「ハムレット」でいえば「ホレイショー」なのですね。
彼の存在感と投げかける台詞で、晃の現実世界での大きさがわかる仕組みです。
声が良く通る事ときちんとした台詞が話せる、ということもビックリ・・・後になって、嗚呼小さんの孫だったと思い出して、
さすが話芸の家の子です(^^)v

それにしても、萬斎のエロキューションの巧みさにはお辞儀でした♪
噛んでるとこも有りましたけど巧い!!
でも、ちょっとあまりにも技巧的で煩いとも思ったり(^_^;
わかったよ!巧いのは!!って感じになります(^^ゞ
そういえば「子午線の祀り」の時は相当盛大に噛んでいたそうで・・・あれだけのエロキューションを使い分ける人が可笑しい(^^ゞ
とにかく、舞台上での悲劇的なオーラは素晴らしいですよね(^^)
しかし、鏡花と晃(夜叉が池の傍に住む夫婦の夫)の演じ分けはちょっと苦しい(^_^;
上手で本を広げて地の文を読む形で表現するのだけど、これはいらなかった、と思いますね。

異次元の妖怪の世界に能を持ってきたというのも、ちょっとイージーですなぁ(^_^;
ちょっと勿体無いですねぇ(^_^;
だったら、半能を梅若晋矢になんかさせないで、六郎様お出ましになってくだされば文句などなかったのになぁ(^^ゞ
ホントに梅若六郎のオーラだけ!!

その他の米朝門下はまったく、新喜劇みたいな感じでナンテことなく芝居して・・・終わり。

さて、檀れい!
あんたねぇ・・・いくら卒業後の挨拶周りが忙しいとは言え、
せっかく、梅若六郎・野村萬斎と出してもらうのなら、
ボイス・トレーニング位しておいで!
皆様、もうしわけございません、うちの檀れいが〜・・・と宝塚ファンのおばさんとしては謝らなくては(^_^;
でも、そう言いながら、そういう人たちとそれほど遜色ないソコソコオーラで乗り切ったのは偉い、とも思う(^^ゞ
↑親ばか
しかし、歌下手だなぁ・・・あれはあんまり巧く歌われても困る劇中歌なのですが、それにしても声が出ないのは困るぞ!!
もともと、宝塚でも歌えない・踊れない、オーラだけでトップ娘役になったんですけどm(__)m
芝居の計算だけはできる子ですが、
「・・・でござんす」と言うのを江戸風に言っちゃいけません!!
これは明治の田舎の堅気の奥さんが言う「ござんす」でござんすよ♪

大体、鏡花の台詞を喋れるのは玉三郎と浅丘ルリ子だけ!
と言っても過言ではない!!
良重(二代目水谷八重子)だって、朝丘雪路だって、ちょっと苦しい!形だけはいいですけど(^_^;
今回そういう意味でも英太郎の存在は大きかったんだけど、ね(^^)
それを考えれば、まあ高くはないけど合格点出してもいいんじゃないのかなぁ(^_^;

玉三郎の「夜叉が池」は晃に加藤剛、學圓を山崎努で、これがよかったのねぇ♪
白雪姫と百合の二役を玉三郎で、万年婆を南美江でした。
スクリーンの大画面で普通人(一応)の女性を演じるのは無理でしたけど、白雪姫は大変よかった(^^)
恋に身を焼いているお姫様の猛々しさと傲慢な美しさと、
そして百合に対する同情が余すことなく出ていたし、何より台詞が綺麗に出ます(*^-^*)

まず加藤剛の晃は健康的過ぎたけど、「険しい坂なら背負って登る」と百合に言う台詞は今も心に残ってます。
萬斎の晃は其の点、冷たいよネェ・・・今夜の中で、一番心に残った晃の台詞、というのは、
「山沢、僕は、この鐘を突くまいと思う」という台詞ね。これはよかった!
これから起きるであろう事実を見通す重みがあった♪

學圓の山崎努は只一人こちら側の人として登場して、
二人に暖かな眼差しを向けて、最期は、ひとりだけ、こちら側に取り残されて呆然とするんですよ!
ナイヤガラ瀑布を使ったのは行きすぎだと思うけど、その瀑布の上で呆然と
今までに起こったことは夢か現か、と呆然とする山崎努はよかった(^^)
今夜は其処まで行かない所で終わってしまうので、小林十市もやるじゃん、という所で終わりましたけど・・・
幕を下ろす役になったら、どうだろう?重かったかな?それとも淡々と演じたでしょうか(^_^;

まあ、女優で百合or白雪姫が出来るのは浅丘ルリ子!
あの声ですね!!朗読劇でいいからやらないかな〜(^^)

一部として、梅若晋矢・慎太郎父子の半能「石橋」がつきます。
此れがなければ、九時半終演でドタバタしないで帰れたし、タクシーも深夜料金にならずにすんだのに!!
全く、梅若さんは、この晋矢ってのを猫可愛がりして、
MOAの定期能でも晋矢にシテをさせて自分が地頭を謡ってやる、という溺愛ぶりですが・・・(^_^;
晋矢は一応甥ということになっています(^_^;まあいろいろ噂も有りますが♪

シテが晋矢で梅若さんが地謡?
最初、間違いじゃなかろうか、とMOAに問い合わせたら、困ったような声で、
「梅若六郎さんでも地謡で出られることもありますので・・・大変勿体無いですけど」と言っておったぞ!!
絶対チケットの裁き具合が違うと思うもの!!
当然MOAはパスでしたが、今夜ここで、とはねぇ・・・

まあそれでも、巧ければよかった、よかったなんだけどさ・・・それが〜ですよ(^^ゞ
もっとも、晋矢に比べたら、其の息子という慎太郎というのは、なかなかシャキシャキしていてよかったです。
1985年生まれで、今慶応だって言うから中森健之助くんと一緒かな・・・♪
まあ、ソコソコ。
でも、印象として17才くらいかな・・・と思ったら・・・なんと二十歳かぁ〜・・・(^_^;
まあ、勘太郎は偉かった\(^^)/
勿論、お能の「石橋」と歌舞伎の「連獅子」は違いますけどね・・・芸に対する思い入れの違いかも(^^ゞ
でも慎太郎って、けっこう買いだわ♪

そういえば、大鼓のあの弘忠さんのひゃぁ〜!ちゅう掛け声は何?
お獅子はあんな掛け声したっけ・?
後で,VTR「石橋」確認しなくては・・・(^_^;

とにかく、こんなものつけずに、ストレートに「夜叉が池」だけ見せてくれればよかったのに!!
まあ、後の芝居の邪魔にはならなかったのでいっか〜♪


。・゜★・。・。☆・゜・。・゜。・。・゜
後でネットで他サイトの記事を読んだ所、晋矢師の半能と30分のロングインターミッションは
萬斎さまの到着待ちの手練手管だったそうです!!
ナントまあ!どうしてこういう無理をするだかねぇ(^_^;

しかも、これ梅田芸術劇場の?落とし用の特番なんですって!それでこういう座組みかぁ(^_^;
嗚呼(;_;)号泣

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