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2007年

1月24日(水)

NHK伝統芸能鑑賞会

一調「玉の段」
狂言「舟渡婿」
能「隅田川」


いやはや、大変な一日でした!
朝が「源氏」で、一端家に帰って出直すのも交通費と時間の無駄が勿体無い、と、
えーい、国博に行ってしまえ!
と、行ってしまいました・・・いやぁ一日長かったです(^_^;

一調「玉の段」
謡  梅若六郎
小鼓 横山晴明

いやぁ!久々の梅若さん!!さっすが〜\(^^)/
の感じでした(^^)

一調(いっちょう)というのは、謡と小鼓だけで、座ったままで10分足らずの素謡って言っていいのか?
お能の番組の中では一番格が高い、と聞いた事があります。
舞踊の世界で言えば、先代勘十郎の素踊りみたいなものなんでしょうかね(^_^;

とにかく、紋服と袴だけで、しかも座ったままですから、本当に「謡一本勝負」です♪
ナンセ梅若さんですからね!
もう、切戸口から、出てきただけで凄いオーラ\(^^)/
能楽堂の開演早々のちょっとした落ち着きのなさが一斉にシーンと鎮まります。
歌舞伎ではジワが来る、といいますが、お能は緊張感が走りますね(^^)
特に、私は一調というのをナマで観るのは初めてですから、よけいそう感じたのかも知れませんが。
能楽堂全体が一斉に気をつけ!の感じになりました。

で、この小鼓の横山さんという方は初見参で、どんなんかな?
でも梅若さんと一調を取り組むんだから、そんじょそこらの鼓方じゃあんめぇ、と思ったら、
やっぱりかなりの打ち手!!
掛声も、こちらの方は勿論、「隅田川」でも過不足なくて大変結構でした。

幸流だそうですが、今検索したんだけど、出てこない(^_^;
出演公演だけはhitするけど、プロフィールとかはありません。
もっとも、出演公演(座組み)を見れば、凡そのところはわかる?ので、まあなかなかの囃子方でいらっしゃるのです(^^)



能「隅田川」

シテ  友枝昭世
ワキ  宝生 閑
ワキツレ 宝生欣哉
笛   一噌仙幸
小鼓  横山晴明
大鼓  柿原崇志
子方(梅若丸の霊) 内田貴成
後見 内田安信、塩津哲生
地謡  香川靖嗣、粟谷能夫、粟谷明生、中村邦生、
長島茂、狩野了一、友枝雄人、内田成信

これが、ですね・・・。
やっぱり友枝さんて凄い人だ\(^^)/
実は、まだ、去年の友枝会の観劇記をアップしてないんだけど、
あまり、なぁ〜〜〜という感じだったんですよ(^_^;

でもまた今回はさすがだナァ・・・と言う感じでした♪
ちなみに、やっぱり、「橋懸りの友枝」さんですよね(^^)
その出の焦燥感を伴ったまだ微かな希望を繋いだ母の姿と、引っ込みの寂寥感に打ちひしがれた背中が
もう〜、なんとも言えません(^_^;

本舞台にかかると、母の優しさと強さがない交ぜになって、哀しみもあるんだけど
それでいて、まだ若い母としての色香もちょっと感じられたりして・・・微妙な美しさ、色香だなぁ。
謡の素晴らしさも勿論ありますが、やはり、友枝さんの姿のよさは、ちょっと比類ないのではないか、と思いました。

「隅田川」は梅若伝説からとった話で、歌舞伎でも全く同じシチュエーションであります。
六代目歌右衛門が17代目勘三郎に舟長をつき合わせて、得意中の得意にしていたた演目です。

しかし、今回見て、これはやはり「能の演目」ですね。
能の削りに削った詞と演技の中にこそ、母の心が純化されてくるように思われました。

ワキの舟長の宝生閑さんも言うことなく素晴らしく、情もあり、知もありの結構な舟長でした。
ワキツレの同船の旅人に宝生欣哉さんが出ています。声はそっくりだけれど、やはり謡いだすと相当違うんだ!
別々に出ていると、親父殿に似ているということは勿論だけど、けっこういいワキ方だと思いますが、
こうしてその親父殿と一緒に歌い交わすと、まだまだ・・・と思ってしまう。辛いね(^_^;
押し出しもまだ差が大きいし・・・宝生閑さん、まだまだ頑張ってくださいませm(__)m

本日の地謡もけっこうでした♪
乱れもないし、地謡の詞がよく聞き取れる、というのは素晴らしいことですよ(^^)
と、そのわりに、NHKの配布した詞の書かれたリーフレットを一斉にめくる音が煩くてアララ!!

謡の詞ばかり読んで、下を向き放しにならないで下さい、とよく言われますが、
でも、家で謡の本に眼を通していても、ちょっと見たいときがあることも実はありますよねぇ(^_^;
勿論、オペラでもミュージカルでもストレートプレイでも、一々台本とにらめっこして舞台を見るわけではありませんが。
だから、お能も同じです、といわれても・・・まあ、ねえ・・・。
友枝さんや梅若さんのお能は見なくても詞は「大体」聞き取れますけど、やはり、今のあそこは、という時も。

特に、今夜のリーフレットは、紙質が固くて、さっとめくれないこともあって、みんなが一斉にめくると、
ゴワゴワバリバリの音がして、けっこうぶち壊しでした(^_^;
私も、かなり注意してめくろうとしましたが、無理だったので、端の席を幸い、見開きのままチラチラ(^_^;

それより気になったのは、囃子方です!
あ!仙幸様のお笛はいつもながら素晴らしくて、心に染み入るようでした。
小鼓も↑て゜書いたとおりよかったのです(^^)
ところが、大鼓の柿原さんが、なんとしたことか、お声などはいつもどおりと思ったのですが、
大鼓の音色がいまひとつ、と思ったのですね。
小鼓と掛け合うところも、ちょっとズレが出たような気がしましたし。
そしたら、後見の方が替えの大鼓を出して取り替えてました。
やっぱり何かあったらしい!
最初は、私の思い込みかな?この曲は元々替えを用意しておく曲かな、とも思いましたけど、
やはり、前半の音色はいつもの柿原さんらしくなかつた、と思いましたから、やはり、ちょっとしたアクシデントだったんでしょう。
後半は文句なし♪


でも、とにかく、最後の子方が出る所も、考えていたほど安っぽくはならず、でよかったです。
作者は世阿弥の息子観世十郎元雅ですが、
元雅は子方を、梅若の亡霊として出して、母がその思いに依って梅若の幻を見た、という演出をしたのです。
ところが世阿弥は、亡霊を出すことを反対して、シテの演技力で幻が現れたことを演じさせようとしました。
結局は、作者の元正の演出が現代まで続いています。
もっとも、宝生流の桜間派は子方を出さないそうで、私もそのほうがいいな、と思ってました。

↑先にも言うとおり、能のよさは、不要なものをそぎ落とし、そぎ落としてシンプルにしていくほど効果が高いと思うからです。
だから、せっかく友枝さんがやるのに子方なんか出すなよ、という気分だったのですが、
それほどチープにならずにすみました。
でも、できれば子方はないほうがもっと哀しみが迫ってきたと思います。

そうそう、友枝さんだから、時間正確だと思って安心していたら、20分も延びちゃって、最初70分というのも、
ちょっと無理があると思ったんだけど・・・(^_^;
おかげで、ライナーに間に合わず、普通車でトロトロ。
でも大船で通勤快速が追っかけてきて、待ち合わせになったので、これ幸いと乗り換えてちょっとは早く付いたかな(^_^;


狂言は「舟渡婿」で、前にも見てるし、安心して気を失ってました♪


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