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5月26日(土)

――友枝昭世の会――

邯 鄲

シテ 友枝昭世
ワキ 宝生 閑
アイ 小笠原匡
子方 狩野祐一

笛  一噌仙幸
小鼓 成田達志
大鼓 亀井忠雄
太鼓 金春国和

後見 塩津哲生
    狩野了一

地謡 金子敬一郎・友枝雄人・長島 茂・内田成信
   粟屋明生・粟屋能夫・香川靖司・中村邦生

いやぁ〜♪よかったです!!
今まで、友枝さんは女性を主人公にしたものしか見ていなくて、ちょっと不安だったりもしたんだけど、
さすがでした!
昨年の友枝昭世の会の「安宅」は、チケットを取れない人が続出して
8月には、能楽公演にしてはビックリ仰天の追加公演をしました。
私は、春の公演の分をナント忘れてしまい取り損なっていたのでチャンス♪だったのですが、
何かとぶつかって、結局どちらも見られなかったのですが、
本当に大評判でした!!

というわけで、私などが不安がるのはおこがましい!もいいところですが、
なんたって、おばさんは人様と感じ方が違う所が多いので・・・(^_^;

「邯鄲」は、「邯鄲一炊の夢」とも言われる中国の故事から題材を取った物です。
青春の彷徨に出た青年盧生(ろせい)が、邯鄲という里にたどり着き、其の宿で
粟飯が炊き上がるまでに人生の全てを夢の中に見て、人生の空しさを悟り故郷に帰っていく、というお話です。

でー、友枝さんの盧生(の装束)は・・・詳しく分からないので、
観世喜正氏の「演目別に見る能装束」を参考にしてみると
「シテ 盧生 黒頭厚板法被半切出立(くろがしら・あついた・はっぴ・はんぎれいでたち)」とあります。
面は「邯鄲男(かんたんおとこ)」
冠り物はまあカツラですか、「黒頭(くろがしら)」、これは弱法師や俊寛がかぶっているカツラ、といえばいいかな。
持ち物が「唐団扇(とううちわ」)
作り物が「畳屋台(引立大宮)」・「邯鄲枕」
ということになります。
友枝さんは喜多流なので若干厚板の色や柄行きなどが変わるでしょう(今日は金襴のようでした)が、
まあ、ご参考までに。
そうそう、作り物に入ると思いますが「輿」も出ました。

まず、この出は常に「橋懸りの友枝さん」ですが、いつもの女主人公程の思い入れはありません。

本舞台に移って、
宿屋の女主人にここには、人生の夢を見せてくれるという「邯鄲の枕」があると聞き、
その枕で一眠りしようと言って、屋台の床まで行きます。
その一畳大の屋台が、通された客室というか、ベッドになっているわけです。
屋台に乗るところまでは、ナントナクたどたどしい感じで、
あー、さすがの友枝さんも、面をつけて、この狭い舞台であの大きな一畳大の屋台の上に乗るのは大変なんだ!
と思っていたのですが・・・(^_^;

でー、そこで休んでいると(この時の寝転ぶ?形も素晴らしいよ!!)、
楚の帝から位を譲るという勅使が来て、それを受けます。
勅使はワキの宝生閑さん!出番少な〜い!!
こんどは、その屋台が王宮になっている、という趣向で、
ヌァ〜ント!こんどは、そのやっと乗った!と思った一畳大の屋台の上で舞うのです。フーム!
ここは、大変!!
あ!、屋台の上に起き上がり、立ち上がったとき、
勿論、台に上なんだけど、いつもの友枝さんよりバーンと大きく見えました\(^^)/
えー、いつも、女主人公は楚々として、悲しみに耐え、ひっそりと舞い、
あるいは、多少の怒りが合ったとしても、それを押し包む優雅さを優先しいます。
オーラこそ大きいですが、「あの小さなお体で、あんなに凄いオーラがあって」、という雰囲気なのに、
ホントに今日は颯爽と!ノビノビと!大きい〜(^^)

屋台の上で静に舞いだしたものが、ドンドンテンポアップして早間の舞いになり、
感極まって、という感じで屋台の柱に掴まって、片足を半分残して、もう片足を舞台の床に滑らす!
「空オリ」というんだそうですが、歌舞伎でいえばミエを切る!ってとこ(*^-^*)
こういう時に屋台に残す片足も半分だけ、というのが、タブンM先生の仰る
「友枝さんは、汐汲みの型でも、舞台に足を半分しか残さずに、半身乗り出して海の汐を汲むことができる!」
ということなのでしょう(^^)v

凄い体の柔らかさと鍛錬の賜物ですね〜m(__)m

でー、ここで本舞台での舞が凄く颯爽としていて、いかにも青年皇帝が栄華をむさぼる感があります♪
けれどその栄華を楽しんでいるか、という間に、王宮の家臣たちはことごとく消え去ります。
そして、それに気づくと橋懸りまで走り出て、その手すりに身を預けて呆然とします!
これぞ「橋懸りの友枝さん」!

本日の見所bPだと思うのです!!

でー、再び屋台の上に戻るか・・・と、見ていると、
あっ!という間に屋台の上に飛び込んでそのまま、
最初の寝姿になっているのです、これが!!
凄いねぇ!!ホントに鍛錬以外の何者でもありませんm(__)m

でー、そこを宿の女主人に「粟飯が炊けた」と起こされて、
「さて夢の間は粟飯(あわいい)の一炊の間なり」と悟り、
「げに有り難や邯鄲の、夢の世ぞと悟り得て、望みかなえて帰りけり」となります。

橋懸りを静々と入って行く盧生の姿に、観客はまだ高揚した気分を残しながら、
観客自身も夢から覚めたように己をクールダウンしています。
いやぁ・・・よかったです\(^^)/
場内皺葺一つ聞こえませんでした!!

楚の帝の勅使という宝生閑さんは、ワキにしても、今日はちょっと出番が少なくて残念(^_^;
でも、疎漏のあるはず無く、けっこうでした。
楚の王宮の小姓?の子方も狩野祐一君、とってもよかった(^^)
声もしっかり出ていて、舞も堂々としていて、こないだの友枝さんのご令孫より、私はこちらを買いますが(^_^;

アイの宿の女主人に出た小笠原匡という人は、狂言師なんでしょぅが、
なんであんなにキャンキャン喋るのかな?
ことに、ここで一眠りどうぞ、という第一部は、もう少し抑えた声で行って欲しいのですが、
ここを「キャンキャン言う」という口伝でもあるんですかねぇ・・・(^_^;

お笛は仙幸様!いつもながらに素敵です♪あの細い体で、優雅で強靭な響きもお出しになって
キャー♪
そうそう、今日は小鼓が成田さん、二回目ですが、こちらもけっこうでした。
大鼓が亀井忠雄さん!「小原御幸」以来です。だいぶお年を召して、登場された時ビックリしました。
お背中もかなり前傾姿勢でしたし・・・んー?これは〜?と、思ったのですが、音色はいつもどおり(^^)v
ただ、素人の感覚で、ですが、成田さんも亀井さんもお二人ともそれぞれに素晴らしいけど、
掛け合いに微妙な感じがありました。
私だけの感じかもしれませんけど、ねー(^_^;
太鼓が入ると、一切ひとつになるので、まあ、いいんですが。
あー「真の來序」というらしい。
帝の位に就いた、ということを意味する囃子だそうですが、ホントに厳かなの!
厳か、というよりは静に風雲急を告げる、という感じかな・・・結構でした。

地謡もいつものごとく粛々と・・・私、最近は友枝さんばかりで、他の流派の地謡は聞く機会がなくなっちゃったのですが、
みんな、こんなに揃ってましたっけ?
いや・・・コロスとしての部分と、シテとの掛け合いの妙といい、素晴らしいですよ、本当に!
特に、今日は地謡それ自身に人生の哀歓みたいなものを感じてしまった(^_^;
今日の中では、地頭は香川さんてことになりますか?
一度、見に行かなくちゃいけませんね♪
あ、こないだ、長島さんを一度見に行かなくちゃ、と言ったんでした・・・忙しい(^_^;
人間国宝の粟屋菊生さんのご子息の明生さんも見たいし、ね・・・ホントに忙しいm(__)m

まあ、それほどよかった!ということで(^^)


和泉流狂言の「文蔵」がつきます。
野村万蔵の出演予定だったみたいですが、何の表示も無く変更してました。
どうせ、私は安眠していたので関係ないのですが(^_^;
隣の席でハラハラしていたお友達ごめんなさいm(__)m

でも、今日は、もともと狂言は捨てるつもりだったのに、バスと電車が凄〜く巧く行っちゃって、
間に合ってしまったのですよ(^_^;





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