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2008年


9月6日(土)

「狂人教育」
――寺山修司没後25周年――

流山児★事務所


宝塚とお能以外の観劇は久しぶりでした!

うちのお客様のEーRUNさんが出演なさるというのでお誘いを頂いたのですが、
私、一度流山児祥さんの舞台と天児牛大さんの舞踏を見て見たいという積年の野望がありました。

でもさ、マスコミに載らない?載る時は、既に公演中or公演後で、
よかった!素晴らしい!って批評が載ってからなんです(^^ゞ
でー、そうすると流山児事務所や山海塾の会員でもなく、演劇も歌舞伎や大衆演劇中心の
素人のオバサンはなかなか見るチャンスってないんですよ(^_^;

なので、これはもう、這ってでも行きます!!って(^_^;
しかも、何でだか、入場無料なの!!

メールで申し込めばいい、ということで、でも、それもEーRUNさんがしてくださったので、
ノープロブレム!
で、行って来た!!

素晴らしい!でしたm(__)m

えーっとね、一等最初に感じた事は、
寺山修司って、やっぱり凄い天才だったたんだなぁ〜!
ってことです。

天才って、何十年も、或いは何世紀も早く生まれて、先の世界を見通して、
知らん振りして死んでしまうでしょ。
中には、その先の世界を見通した為に、迫害を受けたり、社会に拒否されて夭折した天才も多いはずです。
それから考えたら、寺山修司は生きているときから評価されて、
死後益々評価が高まって、幸せな人ですよね・・・第三者的に言えば。
でも、本人の内部は幸せだったのか不幸だったのか・・・むしろ絶望の中に生きていたのかも知れないけどね(^_^;

それに、ナマの流山児祥を見たぞー!!

いやぁ〜♪カッコいい(^^)
カリスマだわぁ・・・別モンだよ、やっぱり(*^-^*)

大昔、流山児祥という人は、かなり尖った演劇を目指しているようでした。
社会に受け入れられるかどうか、ではない自分の演劇世界を創ることに熱中しているような。
でも、何時の間にやら、その尖った演劇者が、演劇協会の今、理事かなんかやっているよね(^_^;
そりゃあ、唐十郎が国大の演劇の客員教授やる時代だし、
野田秀樹も教授だ!
蜷川幸雄は、彩乃国を根城にして素人の爺婆劇団なんか創って、まだとんがっているけど、
でも、とんがり方が変わってきたし・・・(^_^;

ウーム・・・そういう時代だ(^^ゞ

でー、
「狂人教育」

アンチェインマイハート♪のオーバーチュアが流れました。
だけど、これがオーバーチュアだと理解した人は何人くらいいたのかな(^_^;
けっこう高揚感を持たせる曲ですが・・・。
でー、そこで、流山児氏のご挨拶が流れます。
最後に、「どうぞショータイムをごゆっくりお楽しみください」とゆ〜っくり間を持たせて言うのですが、
これがまたひとつのオーバーチュアになっているんだよ♪
巧いの!!
でー、これをきっかけにアンチェインマイハート♪の曲が高くなって劇場が真っ暗になります♪
誰かが傍を通っていく・・・えー、ここ通路か?失敗もう一列向こうに座るべきだった(^_^;

そして、フワーッと本舞台が明るくなって行きます。
舞台の中央に逆V型に立てた脚立。
両サイドに和太鼓・・・。

ショーにはお約束のジュラルミンのトランク!
これが今回も巧く使われていました。

このトランクは便利なのよね・・・宝塚とか、
他のミュージカルやショーでも、
実際スーツケースにもなり、椅子になり、ベッドになり、
開けると夢がこぼれだしたり、希望が逃げ出したり、世界の向こう側が見えたり・・・。
そうそう、上着を着せ掛けて、去っていった恋人に見立てて歌ったり、訴えたりもするのですよ(^^)

そうだ、今回は断頭台にもなったんだ(^^ゞ
ショーには大事な必須アイテム♪
でも六つも出るとは思わなかった!!
しかも大小さまざま、というか少しずつ大きさが違った六つのトランク!
それを上手に使いまわしてセットにしていきます。
もひとつ、蓋の開閉音を効果的に使ってました\(^^)/

それと脚立が室内への出入り口になったり、ヒロインの末娘が追い詰められていくためのセットにもなります。
うん、脚立に掛けられた飾りをジャラジャラつけたロープが、その音響効果とともに、
末娘が自ら行動を起こす時の世間の絆を断ち切る役割を果たします。

今回は、まず、人形遣いの人形ケースとして始まります。
あー、その前に椅子として、出演者たちが座っています。
↑の人形たち六体とそれぞれの人形遣い六人。
そう、これは人形遣いが使う人形劇として始まります。
元々「ひとみ座」が初演した物だそうです。

プロローグとして、和太鼓を叩き、出演者たちが人形も最初は人間として踊ります。
そしてそのうち人形となって?行きます。

ここのプロローグがね・・・もうちょっと踊れないかな?とは思う(^_^;
勿論、CONVOYじゃないんだから、役者の踊りなんだから、でも、もうちょっと踊り揃えてm(__)m
それとマイムが・・・もうちょっと丁寧に!これもみんなマルソーになれ、とかじゃなくて、さ。
ただ、これは、演出の方で、人間臭さを残してくれ、という指示があったのかな?

和太鼓上手でした・・・和太鼓というよりはたたき方は中国風?
そうそう、これは中国ツアーもあります。
出演者は中国でもオーディションをしたそうで、
人形役は六人全員女性で、中国語を喋る人たち・・・ERUNさんは日本人だけど中国語を喋ります。
人形遣いは全員男性、こちらは日本語族。
でー、字幕をつけます。
今日は人形が喋る中国語の部分に日本語字幕をつけました。
中国では、人形遣いが喋る日本語に中国語の字幕がつくのでしょう。
翻訳はEーRUNさんです\(^^)/

さてさて人形劇が始まります。

お話は、ドクター(これは舞台に出てこない)から、一家の中に狂人がいる、と言われた
仲の良い家族が、祖父の号令一下、その狂人を見つけて抹殺しようとします。
狂人は一家の異分子だから!
でー、みんなが異分子ではない、ということを証明しようと、自分を捨てて同化して行く中に、
末娘だけが「私は私」と自分を貫こうとする。
そして、それが異分子と目され、狂人として抹殺されてしまいます。
末娘の体からは血が流れ出し、人形遣いの手は末娘から流れ出た血に塗られます。

末娘を殺したこと、それは、人形たちがやったこと?
だって、人形じゃないか!
いえ、人形であるはずがありません。だって血が、血が・・・!!
五体の人形たちは、人形遣いたちの血塗られた手を取り、人形遣いたちに見せ付けます。
そして、人形と人形遣いの立場は逆転して、
人形たちは人形遣いとなり、人形遣いたちは何時の間にやら固まって人形になっています。

パンフレットの解説には
「殺された蘭(末娘の名)から流れ出る鮮血。それは彼女が生きていた証。
人形でなく人間であり続けた彼女の流した血によって、
再び新しいドラマが紡がれてゆく」とありました。

一人の狂人より怖いのはみんなの正義だ!
って、何かの暗喩だと思いません?
今の時代にあまりにピッタシカンカンで・・・いえ、一家・一族の話だけでなく、
社会・・・政治・・・宗教としても、国際的にも・・・あまりに合致する部分が多すぎる。

寺山修司は、戦前の日本を、ナチのヒトラーのことを考えていたかもしれないけれど、
それはそのまま・・・現代を見通すカレードスコープになっています。
錯綜する現代模様の中で、人を操る怪しげな暗黒模様が点在しています。
それが、だんだんに広がり大きな面となって行くとき、
華やかなカレードスコープはブラックホールへの誘導灯になってしまうかもしれません・・・。
その時私たちは・・・(^_^;

流山児演出は、時に優しく、時に荒々しく描いて行きます。
そして、最後のどんでん返し(^^)

どこまで寺山の原作で、どこから流山児演出になるのか・・・?

アンコールの最後に流山児氏が登場して、ご挨拶。
「18歳の時に、この場所(大隈講堂)で、初めて寺山さんの「」を見ました。
それがアングラに入るきっかけになりました。
ここで、寺山さんの作品をやるのが夢でした。
今日はそれが叶いました」
と仰ってました。

でー、客席にいた九条今日子氏を紹介なさって、九条氏も立ち上がって会釈なさってました。
我々の世代で言えば松竹女優の九条映子です。
いつの間にか見えなくなったと思ったら寺山修司と結婚して、
「天上淺敷」のプロデューサーになっちゃった!と、思ったらあっという間に離婚して、
それでも天上淺敷プロデューサーは止めずに、
寺山氏が再婚しても、また離婚したし、
九条氏はそのままで、結局、寺山作品の全てを管理しているんですよね(^_^;

結局奥さんとしては生きられなかった、名プロデューサーなんでしょうね(*^-^*)

フィナーレというか追い出しの曲はタンゴ!
ピアソラのりベル・タンゴと同じくらい有名な曲だけど、題名が出てこないな・・・(^_^;
後で、タンゴの曲集見て見ます(^_^;


音楽・本田実、照明・横原由佑はよかったぁ〜!
特に、音楽!最初アンチェインマイハートから、本舞台の幕開けに使ったチェンバロの曲!
素晴らしいよー!!オリジナルなんでしょぅか(^_^;
ちょっと聞いたような気もするのですが、わかりませんm(__)m
アンチェインマイハートの高揚感から、一挙に
メランコリックで、ミステリアスで、異次元の世界にスイっと入れた\(^^)/
とっても素敵でした。

照明は仕掛けが凄かった!仕掛けられてる心地よさに酔った♪

そして、ヤッパリ、脚立とトランクの美術というかセット!!
そして、脚立にかかった飾りつきのロープ。
あれは超効果だわー(*^-^*)



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