表紙へ

02月18日(水)


NODAMAP
「パイパー」

松たか子・宮沢りえ・橋爪功・北村有起哉・佐藤絵梨子・野田秀樹他

見たよ〜!

野田秀樹のものは、テレビでだけですが、多少は見ています。
凄い才能の持ち主で、それでいて遊び好きで、
芝居作りは、色んな広大なテーマや主張なんて難しい高尚なことを越えて、
彼の最大のお遊び♪なのだ、ということも先刻承知しています。

しかし、テレビはテレビだからね・・・一度ナマで見たい!と思ったましたけど、
これが超プラチナチケットなわけですよ〜!
それが、ヌァ〜ント!eプラスの先行予約が入ってきて、ウォー!!
これは、本当はなかなか無い機会なのでイイトコで見たい、と思ったんですが、
当然抽選厳しいと思ったから、とにかくどこでも劇場に潜り込めれば、といういつもの手で、
BL席希望しました!!
大正解だよね〜(^^)
当たった!\(^^)/!

でー、行って来ました(^^)v

凄いですネェ〜!キャンセル待ちの列!!
でー、もう、この先は並んで頂いても無理です、と劇場の係りの人が謝っているのに、
皆さん、諦めきれずに迫ってました(^_^;

BL席は、三階の両サイドの席で、歌舞伎で言えば三階東西という所です。
でー、一列ずつしかなくて、その後ろ側が立ち見になって、当然満杯!
二階の両サイドにも並んでいます。
舞台が見えない部分もあるのですが、まあ、野田秀樹のは台詞劇という所が多いから、
そう不自由は感じません(^_^;

というわけで・・・
オーバーチュアがなんだっけ・・・流山児さんの時は、アンチェインマイハートで、
かなりのインパクトだったけど、今回は、同じような感じで・・・曲なんだっけ(^^ゞ
でもスタンダードジャズでした。

でー、やはり、音が高まってくると、劇場が一寸暗くなって、明るくなると始まりです。

舞台は火星。
あるストア。
フォボスとダイモスという姉妹がもめている。
父親が「おっぱいの大きい若い女」と結婚するのだ、というので、妹のダイモスが、
男と家出していた姉のフォボスに連絡して呼び戻したのだ。

でー、このストアの主人で、二人の父親のワタナベが現れて、
若い女が現れて、
彼女の連れ子のボーヤ、キムが現れて・・・話は進んで行きます。

一応、彼らは人間です。
いや、人類です。
大昔、地球から火星に移動してきた人類の子孫です。
彼らは、もうナマの食料は食べない。
生きている食材を食べるなんて、なんて残酷な!なんて野蛮な!・・・と言う時代。
そうか?・・・この辺から、アンテナが動き出す・・・。

でー、話を進め、遡る小道具がたくさんに集められたたくさんの「眼」!
そう、「眼」です。
いろんな時代のいろんな場面を見て、記憶しているたくさんの「眼」たち。
この「眼」を鎖骨に当てると、その「眼」が記憶している場面を体験する事が出きる(^^)
このへん、「目玉親父」の発想なのかな・・・(*^-^*)

なぜか、ワタナベは、この「眼」のコレクションを持っているのですよ〜(^^ゞ
柳ゴオリのような箱に入れて・・・波の効果音を出すあの小道具のように、
左右に転がすと、これも波の音が聞こえます。
その波の音は、歴史の音です・・・。

さて、若い女の名はマトリューシカ。これがサトエリなんだけどね・・・彼女の演技力は、
「八人の女たち」で確認済み♪
これも出番は少ないけど、怪しげでしたたかな若い(子持ちの)オネーチャンでしたよ。

彼女の名前のマトリューシカ・・・つまり入れ子のお人形。
剥いても剥いても同じ顔して出てくる、本音のわからないオネーチャン。

登場人物が出揃った頃、
この火星でも、食料が無くなってきたりしていること、
この火星の平和を守ってきたはずのパイパーというロボット?の動きがおかしい、と言う話になってきます。
いつから、パイパーはあんな動きをするようになったの?という話が出て、
なんで人類は地球から火星に移り住んできたの?
と、みんなが、人類が火星に移り住んできた時の事を知ろうとします。

このパイパーがコンドルズが出てたのねぇ・・・プログラム見てビックリでした(^_^;
コンドルズは主宰者の近藤良平しか知りませんけど、今やかなり広範囲に活動する振付師ですよね♪

マトリューシカの連れ子のキムは、意外や、優秀な男の子でした。
大倉孝二って、あー、こういう感じなのネェ・・・。
ワタナベのコレクションの「眼」を体験して、この火星の歴史を学ぼうとします。


火星における人類の始世紀?創世記は、野田秀樹扮するゲネラールというカリスマから始まりました。
彼が地球から、人類を火星に導いてきたのです。
そして、何でも数字で幸福度が計れる、というイメージと、
火星における人類を守るロボットパイパーを紹介します。
パイパーの行動は、人間たちの意志を飲み込んで、その意思を実行する、という。

このへんは、まんま、現代の比喩になっています。
巧いな!と思ったのは、幸福度を著す数字が「777」から始まって、「8888」を目指す、というの。
「8」は「∞」を捩っているわけ!!
凄いネェ〜!あの人の発想!!
何でも数字・・・パーセンテージとか、
人間たちの意志を実行なんてPCイメージはふつうに浮かぶだろうけど、
「∞」を「8」に仮託するって・・・凄い!!

でまあ、理想に燃えた火星が、いかに怖ろしい星になって行ったか、
てなことを追求していくのを進行していくのですよ。
でも、肝心の中世の歴史が抜けています。

誰かがあけてしまったパンドラの箱!

そういえば、その箱をあけるのは「ビオラン」て名前なの・・・パンドラを捩って、
バドランとかドンパラとか・・・ダメ?
そうそう、このビオランの北村有起哉って、あの北村和夫の息子!
去年、あ、もう一昨年か、
朝日と読売の両方の舞台芸術賞を取っちゃって大ブレークしちゃった!!
北村和夫の息子にしては、随分線が細いんじゃね?と思っていたら、
いやいや、けっこう、濃いです!!
うん、宮沢りえがブランチやったら、スタンレーが出来そうだわー♪


ま、いいや・・・・
でー、マトリューシカは、
さっさと、連れ子のキムを置いて、年の離れたワタナベをおっぽらかして、別の男と逃げちゃうんだけど。

残されたキムが進行係りになって、
フォボスとダイモスの母への思いを辿ろうとする意思が絡んで、
この火星で起こっていた歴史の事実を知ろうとします。

そこへ、中世の歴史を見た「眼」を持った子孫が現れて、彼らに託して行きます。
そして、みんな、その「眼」を体験してしまう・・・。
中世の「眼」は何を見ていたのか?
なぜ、中世の「眼」は、このワタナベのコレクションには入っていなかったのか?

そうそう、この時既に、火星は終焉を迎えようとしているのですが、
それ以前に地球が既に死んでいることを火星に移動した人類は知らされていない、
というのね。
それは、自分たちが信じきっている為政者たちが、何も知らせてくれないから。
でも、人類たちが何かを知ろうともしなかった!というのも厳然たる事実だったわけで、ね(^^ゞ


最終的には、やはり、食糧の話になってしまう。
当然、パイパーが人間の遺体を引きずっていくシーンを見せるところから、
凡そのことは想像できます。

この辺で、「パイパー」と言う名前の意味もちょっと感じるわけさ。
最初は、触手が輪っかになっていたのが片側が外れると、そのまま「管」になって、
攻撃的な触手になったり、吸い込んだり、遺体を引きずる道具になったりするのです。
パイプはそのまま「管」なんだよね(^_^;

でも、ストアという意味に、そういう意味を隠していたのか!というショッキングな裏技もあり、でね(^_^;
これは、ちょっと、ゾ〜!でした。
ストア!ストア!・・・ストーン・・・ストーム・・・トゥームストーンなんちゃって(^_^;
なぜ、このストアにたけはモノがあるのか?なんてワタナベの台詞もあるけど、
それは一寸解説が不完全ですなぁ・・・ストアにあるものは食糧だけでは無いわけですから(^_^;


もう、このフォボス・宮沢りえと、ダイモスの松たか子が素晴らしいのです!!
いや、ビックリ!!
松たか子は、あのアルドンサ以来、舞台女優として尊敬しておりますが、
宮沢りえは初見参だったのね(^^)
凄いネェ・・・この人のブランチ見たいです!!
声が意外に太くて低いのにビックリ!声帯も強そうです。
二三日前に妊娠と結婚を発表したばかりで、おなか大丈夫?という心配もどこ吹く風で、
凄いパワフル(*^-^*)

この「眼」を柳ゴオリに入れて波の効果音を出すビーダマのように転がすと・・・
フォボスはひとり、その波の響きの中に身を潜めます。
遠い、遠い歴史の事実、ではない、フォボスの体験した事実がフォボスの中によみがえっているようです。
そして、あの中世の「眼」は、どうしてこのワタナベのコレクションには入っていなかったのか?

劇中
二人は、フォボスとダイモスから、
火星創世記に地球から移籍してきたばかりの「食糧係」のおばちゃんに急変したり、
また、最後の時にはには、フォボスは四歳の幼児のフォボスに、
ダイモスは、ダイモスを身篭っている二人の母になります。
ここが、すばらしいのよ!!
特に、身篭った母に顔になる松たか子の表情が本当に神々しくて強い母の顔なんだ!
グッと宮沢りえの四歳のフォボスを抱きしめる所は、この子を、おなかの子を守らなくちゃ!
と言う意思がヒシヒシと伝わります。
松たか子があんな母の顔を持っているとは思いませんでしたm(__)m

宮沢りえも、四歳は一寸無理かもしれないけど、確かに幼児です。
幼児に見えました。
特に、さっきまであんな野太い声で喋っていたのに・・・というくらい、儚げで心細そうな声です。

さて、そのストアの主人で、若い女に騙されるスケベ親父のワタナベの正体は?
という所なんだけど、
もっと、橋爪功が゜小狡感じにならないとダメなんだと思うけど、な(^_^;
今、朝日で、野田と橋爪の公開交換書簡を連載してるけど、
良い年したオジサンが二人でじゃれあっておっかしいの(^_^;

まあ、そこでは、けっこう悪ぶってますが・・・この舞台では・・・難しいのう(^_^;
昔の橋爪功なら出来たよね・・・でも、今の橋爪功は、良い人の顔が強くなっちゃって、
ちっとも小狡いイメージにならないのね・・・。
昔から、悪役をやる人ほど実際のお人柄が良くて、
ずーっと悪役をやっていた人が、ある年になっちゃうと、
本来の善良な顔が出てきてしまって、悪役商売上がったりになっちゃぅ、っていうんですが、
まんま、です。

大体、役の設定も小狡くはなってない、と思うのね・・・このままだと。
でも、自分に都合の良い歴史だけを歴史にして、自分の都合の悪い歴史はなかったことにしよう、とする、
今の誰かさんたちのような所はあります。
つまり、人間的には良い人よ、
でも、社会的に、自分に都合の悪い所は知らん振りしたがる・・・世間一般よくあるタイプ♪

それと、やっぱり、松のフォボスとダイモスの母は綺麗に設定しすぎ!
彼女がもっと手を汚さなければ、
フォボスの衝撃も、ダイモスに抱く不協和音も響かない、というか響きが足りなくなる、と思います。
生きる為に、子供たちの為に、母が手を汚してこそ、御前たちが生きられたのだ、といわなければ。
人間が、いえ生き物が生きていくためには、別の生き物を犠牲にしなければならない。

犠牲がなければ成り立たない社会である?!
ということを、もっとストレートに出した方がいいんじゃないかと思うんだけどな(^_^;

半村良の読み過ぎかな・・・でもさ、生物がいる、と言う以上、更に、そこに別の生物がいれば、
当然起こる事であって、その残酷さの中に命は繋がれていくわけですから。


でも、一応、身篭ったダイモス、
父親候補がワンサカいるという子を無邪気に身篭って、ダイモスは、このストアを出て行こうとする。
このへん、モーパッサンの「蝿」だなぁ(^_^;
その時に、ダイモスは、身篭った今こそ、私にはわかる。
小さな子はまだ人間にもなっていないんだ!
その小さな生き物が生きる為にしたことは許されるんだ、と言うんです。
その言葉でフォボスは癒され(る?のかな・・・?)、

でー、放浪の旅に出ていたというフォボスの男が帰ってきた!ということで、
彼女自身も、このストアを飛び出していくんですね♪
でー、フォボスの帰った来た男の名前がペールギュント(^_-)-☆
そりゃぁ帰って来るさ(^^)

野田秀樹は優しい人よね(^^)
だから、どんなテーマを取り上げても、みんな、落ち込まずに家に帰れるんだと思う。
これ、まともに重たくやったら、考えるのも嫌になるものねぇ(^_^;

それと、二次元の平面の紙に書くのなら、なんともなるだろうけれど、
これを立体化して舞台に組み立てるって、凄い技術とパワーだよねぇ!!
そういう全てをひっくるめて凄い人だ、と改めて思いました。

でー、やっぱり、ある意味、NODAMAPって、野田秀樹のワンマンショーなんだな!って(^_^;

そうそう、フォボスとダイモスは、火星の衛星だそうです。
ともに、ギリシァ神話の混乱の神フォボス、恐怖の神ダイモスから名づけられたそうです。
ちなみに火星はMars・・・軍神じゃなかったけって、今検索したら、
ローマ神話の方で「軍神」でした。
軍神の周りをグルグル回っている恐怖と混乱、ということも、野田秀樹なら含んでいそうだわ(^_^;




表紙へ