9月13日(木)

「ポンペイ展」
「シルクロードの宝物展」
「仙香iせんがい)展」


嫌なことばかりが続くので、脚も腰も痛いけれど、気晴らしに出かけました。
行く先は江戸博物館の「ポンペイ展」と出光美術館の「シルクロードの宝物展」
で、この出光の方に、凄いおまけがつきまして「仙香iせんがい)展」
以下、ご報告。

まずは、江戸博物館
「ポンペイ展」


会場入り口を入るとすぐ犠牲者の石膏型が三体安置(?)してありました。
これはちょつとなぁ・・・確かに貴重なものだけれど、入り口すぐに置くものか・・・?
ことに、今の時期、最初は、こういう配置だったとしても、
あのテロで多くの人が、ビルの瓦礫の下に埋まっているというニュースがあるのだから、
少しは目立たないところへ移動させるとか、配慮はなかったのだろうか?と、私はおもいましたけどね。

出展数はかなりのものだし、映像をうまく使って、出展された道具類の傍にはその使用方法、
当時の職人の仕事振りを描いたCG、当時の楽器(シンバル・竪琴・タンバリン・笛など)は映像と音まで聞かせてくれている。
そのあたりは大変いいのだけれど、出展品にどの程度の時代のものか、まるで表記がない!
勿論、「ポンペイ展」と言うくらいだから、紀元79年8月24日にヴェスヴィオ火山の爆発によって埋没してしまったのだから、
少なくともその前後の時代のものであることは確かなのだけれど、
その時代だけに使われていたのか、あるいは、それを遡ってどの程度前から使われていたのか?なのですよ。
ポンペイの街は紀元前7世紀頃からあったわけですから、その辺りのものだって残っていたはずだし・・・
展示目録を買え、と言うのでしょうか?そちらには載っている、ということなのか・・・?

現に、インターシティ・ギャラリーの「ポンペイ展」では、いろいろな器や瓶・食器などが展示されていたけれど、
結構古い、4〜5・6世紀のものもあったはずです。
それと、あのインターシティギ゜ャラリーは、ちょつとおどろおどろしい舞台装置!と言う気もしなくはなかったのですが、
ポンペイの街並みを再現して、そこに「裕福な家」を再現して、出展品の壁画やベッドを置き、
展示品の瓶や酒器を使った居酒屋や、同じく出展品のパン焼き釜でパン屋を再現してましたよね。
浴場を配置・再現したり、神殿の再現場にはアポロ像を配置し、墓やチャツチイけれど闘技場の再現もありましたね。
そして、その街の広場などに当たるところに、ウェナス(ヴィーナス)像やディオニソス像が置いてあり、
ちょっといかがわしい気もしましたがけっこう、雰囲気は出ていたのですよ。
傑作は秘儀荘(娼家?金持ちが郊外に作った別荘だそうです)の壁画の再現だったですが(^_^;

ところが、今回は、それに比べると、単に展示物をずらずらと並べているだけ!という感じなのです。
それは「日米交流の曙」展の時も感じたことなのですが、
江戸博物館の学芸員というのは、どういう方達なのでしょう?
東京都美術館や世田谷美術館とは交流がないのでしょうか?
それでも、今回は、先ほど述べたように映像はうまく使っています。
ロビーのVTRはちょっと長めで9分ほどあり、ソファに座って見られるようになっています。
そこで、ヴェッテイ家の当主の一日、ということで、
ポンペイの家や街並み・アボンダッツァ通り(メインストリート)・競技場・浴場・居酒屋などがCGで描かれますから、
インターシテイギャラリーと同じ、と言えば言えるのですけれど・・・

再現された街並みの中で、あちこちに店のセットをしつらえて、展示品が配置されているのとは、違うような気がします。
予算や会場の条件もありますが、配置の工夫、というか、もう少し考えて欲しいですよね。
それにねインターシティギャラリーの時は、ポンペイの街の地図が配布されたのですよ。
で、その裏に再現した街と展示品の配置図が描かれていて大変よかったのですが、
今回は出品目録もないのです(;_;)

それでもステファヌ縮絨工房という当時の織物工場(織物はポンペイで一番盛んだった地場産業)のジオラマがあって、
ここでは、当時の織機の復元機と織り方のVTRが流れていました。
もうひとつ、「ユリウス・ポリビウスの家」の25分の一の模型があって、
壁画まで描き込んであったのには、凄い人だかりがしていました。
このユリウス・ポリビウスというのは、解放奴隷で金貸し業などから大金持ちになったらしい。
三代にわたる家族が住んでいた大邸宅で、当時としては大変な貴重品のガラスがたった一枚だが、窓に入っていたと言う!!
しかも、その板ガラス一枚で、当時の職人の一か月分の賃金以上の値打ちがあったそうです。
そうそう、ガラス(コップのような)半ダースセットとか、ガラス製品は結構ありました。
当時はソーダガラスの類ですが、今でも、ちゃんとガラスとはっきり分かるほどの製品です。

「ポリビウスの家」よりも、もっと高級住宅街にあった「ファビウス・ルフスの家」から発掘された、
「カメオ技法によるガラスの浮き彫り」というレリーフは、
厚さ6ミリと言う濃紺のガラス板に1ミリ厚の白いガラスを接着させて浮き彫りを施したと言う超芸術品で
今見ても、十分美しく、当時としては、金細工以上に高価なものだった、ということです。

今回のマイHITは、↑これと「黒曜石の杯」ですね(^^)
ポンペイの南約6キロの地点にあるスタビアエというローマ貴族の別荘などがあるリゾート地の豪華別荘から発掘されたものです。
大きな黒曜石丸ごとをくりぬいて杯にして、その周囲を紅白の珊瑚・ラピスラズリ・クジャクイシ・金の象嵌細工で飾られていました。
当時はやったエジプト風のエキゾチックな図柄(エジプトの神々と奉納者)で、溜息が出るほど素晴らしいものでした。

映像による要所部分(前述の分や、日時計のしくみ、水の低地から高地に上げる作業のしくみなど)の解説はよかったです。
でも、個々の展示品の傍の解説は、そのもの自体の呼称だけというのが殆どで、
↑のレリーフの解説などは、新聞の「ポンペイ展」の記事から借用したもので、説明不足の感は免れない。
それでも、面白い展示はありまして、

当時のポンペイの人たちの体格と平均年齢
男―41歳―166cm―65キロ
女―39歳―153cm―49キロ
女性は大体3年ごとに出産したそうです。いくつまで生みつづけたのかは書いてなかったな・・・?

当時のポンペイの通貨単位は「アス」で、一アスが今の10円に相当し、それで換算すると、
入浴料―0.25アス(2.5円)
パン―2〜8アス(20〜80円)
ワイン―1〜4アス(10〜40円)
ラバ―2000アス(20000円)
奴隷―10000アス(10万円)
ということでした。

まあ、出展数も多くてよかったと言えば、よかったのですが、
思えば、あの暴君ネロがポンペイのウェヌス神殿に捧げたと言う「黄金のランプ」とか出ていなかったし、
今日の朝日の「サトウサンペイの見たポンペイ展」の絵で気がついたのですが、
お金持ちの「宴会の壁画」が出ていなかったなぁ、と・・・。
だってさ、そのサトウ氏の挿し絵が、ちょっとおかしいんですよね。
当時の金持ちの宴会って寝そべってやるんだそうですけど、あの挿し絵の格好はどうみてもおかしいですよ(^_^;
まぁ、そりゃ中にはそういう格好で、寝そべっていた人もいたろうけど・・・それで「宴会の壁画」がなかった、と気がついたわけです。

ま、そんなこんなで、見終わって、食事に。
これはよかった!!涙物でしたよ!!!
博物館の外側になるけれど、一応、博物館の食堂になるのでしょう。
ビーフカレー780円也!
でさ、これが、ナント、ナント、大きなお肉の塊が5〜6個も入っているのにびっくり!食べて美味しいのにまたびっくり!!
従業員の感じよさにまたまたビックリ!!!あそこは超おすすめです(^^)


というわけで出光美術館へ。
「シルクロードの宝物展」

ここは何年振りでしょう!!10年は来ていないわ(^_^;
で、入ったのが2時半ちょつと手前くらいだったのですが、ナント2時から学芸員の方の解説つき見学があったのですよ!
途中からですが、うまくそれに潜り込んで、後半部分だけですがいいお勉強をさせていただきました。

今回の「シルクロードの宝物展」というのは中近東文化センターとの共同企画で、会場もそこと二つに分けて、
出光の方は「陸のシルクロード、草原の道」
文化センターの方は「海のシルクロード」というわけ方で展示してあるようです。

九州「沖ノ島」というのが、凄い宝物の発掘場だというのは、前にNHKの番組でちょっとだけ見て、名前だけは知っていたのですが、
学芸員氏の解説によると「海に浮かぶ正倉院」ということだそうで、びっくり!
当然女人禁制で、男でも、年に一回だけ、潔斎沐浴をして、初めて島に上がることが赦されるそうです。
で、そこから発掘されたものなどを見るとペルシア―中国―日本という、文化伝播のルートがはっきりわかる上に、
中には中国を飛び越して直接ペルシアから日本に渡来した、と思われるカット装飾ガラス椀(破片なんだけど)が出土したり、
大変な島なのだそうです。

そうそう、沖ノ島には、朝鮮(新羅)渡来の金の指輪なども発掘されていまして、この時代に金の指輪か!とびっくりでした。
そういえば、唐三彩に対して奈良三彩というのもあるそうです。
唐三彩を真似て、日本でも作られた、と言うことなのでしょうね。これも沖ノ島で出土しています。

この後、西方からコバルトが入って来ると、従来からラピスラズリの藍色に憧れていた人々が、
(入り口傍にはラピスラズリ製獅子頭部(イラン、紀元前5世紀)の破片が展示してありましたが)
唐三彩の周囲を藍で彩った藍三彩を製造したのだそうです。
これはまたエキゾチックで、アジアというよりオリエントの香りがします。

狩猟民族の契丹族が建てた遼王朝の金製・金鍍金の装飾品は素晴らしいものでした。
もともと、蔵に蓄える、という習慣のない遊牧民は高価なものは身につけて移動するわけです。
陳国公主墓に埋葬されていた夫婦の冠・馬具・ブーツなど、素晴らしい金!金!金!の世界でした(^^)

ここ遼でも、唐三彩に対して遼三彩というのがあり、丸みのある仕上がりを見せ、図案施釉法などに工夫が見られます。
遊牧民といえば、狩猟文様というのには特徴があって、馬は前方を向いて走っているように描いてあり、
その馬上の王様は、後ろを向いて矢を射掛ける姿に描かれているそうです。

これが元になると、イランのものと区別のつかない青い地色に黒の文様が入ったものが出てきます。
青色がシックと言えばいえるけれど・・・普通の唐三彩のほうがいいですね(^_^;

ガラス器から陶磁器へ、ということで、ここにもガラスが展示されていましたが、こちらは、シリアあたりの、
今見れば陶磁器?というような、地肌で金彩・銀彩が七色に輝くようなガラスです。
素敵です!!

中近東文化センターの三本の柱となっているコレクションも少しでていました。
1.石黒孝次郎コレクション 2.三上次男コレクション 3.伝・大谷探検隊コレクション
石黒氏というのは骨董商だったけれど、コレクターとしても大変な人だったそうで、死後ここに寄贈されたらしい。
三上氏は学者で、忘れられていた「海のシルクロード」に光をあて、「セラミックロード」と命名した人。
大谷氏は西本願寺22世の大谷光瑞氏のことで、留学中にシルクロードから仏像などが発掘されることで、
自分の使命感に刈られて探検隊を組織したけれど、戦争に絡んで発掘品は4箇所に分散されたということでした。
旅順博物館・朝鮮総督府のあつた国立中央博物館・そして、日本の国立博物館と自分のところ龍谷大学ということなので、
学芸員氏は、非常に残念そうでしたが、私はそれで十分じゃないの!と思いました。

さて、この学芸員氏は話もうまくて、感じもよくて、博学で大変結構なのですが、
自分でもしきりに言い訳してましたが、
「自分の出した企画物なので、少しでも詳しくと思うと、最初の方だけで時間がなくなって、
いつも終わりが駆け足になってしまいます」とのことでした。
そんなことは、聞いてるだけで、わかります(^_^;
私は、30分後れくらいで丁度よかったかも(^_^;

でも、やはり学芸員の方が説明につくということはいいことですね。それは確かです。
ただし、展示品全部これをやられたら、バテマス!!
だからポイントだけね。今日はラッキーでした(^^)

ラッキーついでに、ナント常設展が人気の
「仙香iせんがい)展」

これはよかつた!今日の大ホームラン!
時節柄心に染みてウルウル状態ではずかしくも回ってきました(;_;)

画賛が殆どなのですが、(文は仙笄の名で詠んでいるようです。)

「堪忍柳画賛」というのに、「気に入らぬ 風もあらうに 柳哉」

「座禅蛙画賛」は、「座禅して 人が仏になるならハ」

「卯そ替え画賛」では、「世の卯そに己のか誠おかへてやれ 祈らすとても神や守らむ よしあしの中を流れて清水哉」

何やら、今これを見られた、と言うことに神仏の掲示を感じます。

それで、例の「老人六歌仙」
これは「古人の作」ということで、仙高フ作品ではないのですが

しわがよる ほ黒が出ける 腰曲がる 頭がはげる ひげしろくなる
手は振ふ 足はよろつく 歯は抜る 耳は聞こえず 目はうとくなる 
身に添は 頭巾襟巻杖眼鏡 たんぽおんじゃく しゅひん孫子の手
聞きたかる 死とむながる 淋しかる 心は曲る 欲深くなる  
くどくなる 気短になる 愚ちになる 出しゃばりたがる 世話やきたがる
又しても 同じ咄しに 子を誉る 達者自まんに 人はいやがる


これは、笑いましたね(^o^)丿
それで家にかえって、夕食時にその話をしたら、アホ息子メ!
「それ大きく書いて、あそこに貼っとけば」ですって(^_^;

で、更に、後日談。この時は実習のお疲れで、早々に早寝して夕食時に居合わせなかったアホネーチャンにこの詞を伝えると、
極々自然に「ふうん、これママのこと?」ですって(^_^;
挙句の果てに「ママは幸せだね」と言うので、「それって、ママをよく理解してる子どもを持ってってこと?」ときくと、
「そりゃぁ、そうでしょ」と、また極自然のお答え!!「あっ、そう」と言うしかないじゃん(;_;)

そうそう、相変わらず、出光はお茶のサービスをしています。
勿論自分で勝手に入れるのですが、紅茶のテイーバッグと砂糖・スティックが置いてあります。
一回りして疲れたら皇居を眺めながら、ゆったりソファに凭れて一休み!!
絵葉書の類も80円と超安値!!
出光の文化にかける執念みたいなものさえ感じます。
しかし、これはいい執念ですよね(^^)