2月8日(金)

待望の「チャルトリスキ・コレクション」に行って来ました。

結論を先に言いますと・・・それほどでもない(^_^;
ちょっと期待しすぎたかな・・・という反省もあり!です。
勿論、けっこう混んでもおりますし、けっこうな人だかりもしてますしそれなりに良かったんですが、
まあ、「白貂を抱く貴婦人」がね・・・
取り巻いていた人たちの中から、「ナンダ、ポスターと同じね」という声が聞こえて、
うんうん、同感!と思ってしまいました(-.-)
まあ、小さいですから、ポスター(より一回りくらい小さい)サイズといつてもいいわけで・・・今のポスター発色がいいですし(^_^;

件の「モナリザ」についても、某サイトのあるご夫婦の会話で
夫「“モナリザ”って、たぶん世界一有名な絵だけどさ、そんなに素晴らしい絵かね?」
妻「だめだめっ、それは言わない百年のお約束なんだから」
なんてジョークがのってましたから・・・はぁ(^_^;

まあ、とにかく、チャルトリスキ・コレクションというのは、18〜19世紀のポーランドで
政治・文化の発展に大きく貢献した名門貴族「チャルトリスキ家」のことです。

ことに、ポーランド啓蒙期に活躍した政治家アダム・カジミシェシュ・チャルトリスキ公爵の妻イザベラ公爵夫人が、
ポーランドで最初の美術館を設立し、現在のチャルトリスキ美術館の礎を築いたそうです。
件のレオナルド・ダ・ヴィンチの「白貂を抱く貴婦人」は、当初からコレクションに含まれていたそうですが、
第二次世界大戦中にはナチスに略奪され、戦後ドイツで発見されたものの、同時に失われたラファエロなどは、まだ未発見とか。

そのイザベル公爵夫人の肖像画が、展示されていましたが、意外や可愛らしい庶民的な感じの若いおばさん像でした。
ホント!今でも、幼稚園に子どもお迎えに行く若いお母さん、という感じですね(^^)

コレクションの絵画は14〜15世紀のイタリア絵画が中心です。
シェナ・フィレンツェ・ヴェネツィアで制作された後期ゴシック様式の宗教画の小品ばかりなのですが、
美術史上大変重要な板絵(カルロ・クリヴェッリ「大修道院長聖アントニウスと聖女ルチア」1470・テンペラ)などがあるそうです。
ですからいいといえば確かにいいもので、実際メモなどとっている方達もいらっしゃいました。

で、
レオナルド・ダ・ヴィンチの「白貂を抱く貴婦人」
これは、昨年秋にNHKで特集したりしていてチェチリア・ガッレラーニの名前は大変印象的にインプットされていました。
それもあつて、相当期待していて、しすぎちゃったのですかね(^_^;

レオナルド・ダ・ヴィンチの描いた肖像画は現在世界中で三点が確認されていて、
一枚がルーブルのモナリザ、で二枚目が・・・あれどこだっけ?
で、三枚目が、この「白貂を抱く貴婦人」だそうです。

もともと、この絵は寄贈された頃は、フランス国王フランソワ一世の「ラ・ベル・フォロニエール」と呼ばれた
愛人を描いたものとされていたそうです。
それがいつ、どのようにして、チェチリア・ガッレラーニの肖像画だということになつたのかは書かれてありませんでしたが、
チェチリアモデル説を裏付けるものに、ミラノの宮廷詩人ベルナルド・ベッリンチョーニという詩人が、この絵に捧げたソネットがあり、
また、チェチリア自身がマントヴァ公妃イザベラ・デステと交わした書状の中で、
レオナルドが描いた自身の肖像について触れた部分があるのだそうです。

もともとチェチリアは、ミラノの高名な家系の出身で、「花のように美しい」と称えられただけでなく、
イタリア語で詩を読み、ラテン語で演説を奮ったという知性に富み、高度な教養を持った女性としてミラの宮廷に仕え、
ミラノ公ルドヴィコ・イル・モーロの愛人となったそうです。
このあたりがね、NHKの解説と違っていて、NHKでは
美しく貧しい娘がミラノ公に見出されて親兄弟のために愛人になつた、ということになってました(^_^;

で、まあ、1491年1月に、ミラノ公がフェッラーラ公妃ベアトリーチェ・デステと結婚するために
1492年7月に、ベルガミーニ伯爵の下へ嫁がされた、となっているんですけど、
これもNHKだと、結婚前に追っ払われたみたいだけれど、実際は妻妾同居を一年以上もしているわけですよ!!
その間(1491年5月)にはミラノ公との子ども(チェーザレという男子)を出産しています。

この絵は、イル・モーロ・ミラノ公が1490年頃ダ・ヴィンチに注文して描かせたものだと思われますが、
チェチリアが宮廷を離れてからは彼女自身が所有していた可能性が高く、亡くなるまで手放さなかったようです。
チェチリアはダ・ヴィンチがこれを描いた頃「自分はまだ若かった」と述べているそうで、16才頃だと思われる、そうです。

チェチリアが抱いている白貂にもそれなりの意味があって、
まず、白貂を意味するギリシア語の「ガレー」はガッレラーニという姓と1つの語呂合わせになっているそうです。
二つ目には、この絵の注文主ミラノ公ルドヴィコ・イル・モーロは、ナポリ王から「白貂の勲位」を授かっている。
三番、伝統的に「白貂」は、「節度」や「純潔」の象徴とみなされてきて、そこにはモデルのチェチリアへの賞賛の意味がこめられている、ということなどです。

で、美術館の解説はそこまでなのですが、NHKは、その肖像画のモデルをしている間に二人の間に心の交流があり、
肖像画が完成し終わった後、ダ・ヴィンチは、自分を非道に生家から追い出した継母を引き取ってやった、ということになるのです。
それは、ミラノ公の愛を失って宮廷から追い出されるチェチリアに掛けられぬ思いを継母を引き取ることで慰めた・・・
といいたいらしいのだけど(^_^;



でぇ〜、今回よかったのは「ヨーロッパの工芸美術」のコーナーですね。
これはなかなかでしたよ(^^ゞ
去年の国立西洋美術館のイタリア・ルネッサンス展や、シェナ展など、一連のイタリア展などでも何度も感動したものですが、
今回も、リモージュ焼に生地彫り七宝に鍍金を施した聖体行列用の十字架やら、聖体容器、
子牛皮紙で製本された時祷書(じとうしょ)、浮彫装飾と白亜地にテンペラによる彩色を施された写本装禎など、
また、水晶をくりぬいてカットを施したゴブレット、めのうの小鉢、真鍮盤に鍍金して珊瑚や七宝をちりばめた大杯・盆・・・
数え上げればきりがない数々の手工芸品!!
これはかなりのものでした。
そうそう、「エル・シドとシメーヌの遺灰が治められた容器」というのは、
銀・七宝・碧玉のカメオに彩られた逸品で・・・よだれが出そうでした(^_^;

「ポーランドのバロック」のコーナーでは、
「鞍・鐙」「軽騎兵用甲冑一式」というのが針金?で骨組みを作った馬や人体に着せる形で展示してありまして、これが展示の仕方共々見甲斐がありましたね(^^)
もともと、ポーランド人は異国的なものに関心が深かったそうで、
13世紀からのタタール人・コサック人・トルコ人との戦いの結果、ポーランドの文化は東洋文化の強い影響を受け、
17世紀のオスマン・トルコとの戦争での勝利などで、ポーランドの騎士たちが戦利品として持ち帰った品々に強い興味を示し、
或いは東洋文化の影響を受けてポーランド国内で制作されたものだそうです。

17〜18世紀にポーランドは「サルマティア」と呼ばれた豊かな文化を創造しましたが、
「サルマティア」という言葉は古代サルマート人に由来するもので、
ポーランドの貴族達は自らをこの古代民族の子孫だと考え、誇り高く名誉を重んじる独特の文化を生み出したのだそうです。

「19世紀ポーランドの偉大な芸術家」のコーナーでは、
「ショパンの左手(ブロンズ)」がありました!!
すごく華奢な、いかにも働かない人の手でした(^_^;
スタニスワフ・スタットレルという人のショパンの肖像画と
ジャン=パティスト・オーギュスト・クレサンジュという人の白大理石で作られたショパンの頭像もありましたけど、
どちらも、どちらにも似ていないのでよくわかりませんね(^_^;)
(そういえばショパンてデスマスクがあったかしら?)
フェリスク=ジョゼフ・バリアという人の「ショパンの死」という油絵があったのですが、
これが何やらたくさんの人たちが青ざめてベッドによこたわつているいるショパンを囲んでいる絵で、
後援者のマルツェリ・チャルトリスカ夫人も描かれていて、
「コンスタンツェだけに見取られて、貧苦のうちに寂しく死んだ、モーツァルト」という思い込みを覆されました(^_^;
だって、ジョルジュ・サンドと別れた時はもうすでに結核に犯されていたし、
確か、どっかの島で一人寂しく死んだというような・・・かん違いだったらしいm(__)m
それにしても、モーツァルト35歳、ショパン39歳、天才は若くして死ぬことこそ天才なのだなぁ(^_^;

そういえば、ショパンも、当時、ポーランド独立運動の主導者アダム・イエジ・チャルトリスキ公爵の館オテル・ランベール(当時の芸術家達の出会いの場ともなっていた壮麗な建物だそうで・・・)に出入りして、
毎年開催される舞踏会で楽曲を披露したり、アダム・イェジ夫人に楽曲を送るなど,チャルトリスキ家との関係は深かったそうです。
(だとしたら、ジョルジュ・サンドと出遭ったのもここかな・・・だからなんとなく「チャルトリスキ」って聞き覚えがあつたのかな・・?)
まぁ、ポーランドといえばショパン!ショパン!ですねぇ(^^)
私の貧しい知識ではショパンと例の「最後の授業」しか思い出せません(^^ゞ

見たい、と言う方がいたら是非お薦めします。
ただし「白貂を抱く貴婦人」ではなくて、ポーランドの工芸美術を目標に行くことをお薦めします。
それで、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵が見られたら大儲け♪と思うでしよ(^^)