10月10日(金)

八戸図書館「読み本」展

現在受講中の「万葉集」の最後に、
八戸市立図書館所蔵の「読本展」開催中のお知らせが資料館からあって、見に行ってきました♪

大変な充実度で、なんで八戸がこんなものに力入れてんだろう?と、不思議です。
「奈良絵」が粗末に扱われていて、海外から評価されて、慌てて一生懸命になり出した、とか、
江戸の版本などはみんな襖の下張り等に使われちゃって残ってない、だから近世は大変なんです、とか
中野先生が嘆いていらしたではありませんか!?
八戸図書館の学芸員にはよっぽと目利きがいらしたということなのでしょうね。

「読本」というのは・・・、とやろうとしたら、本日の展覧会の資料・・・凄いのです!!
「国文学研究資料館整理閲覧部参考室」という奥付でA4判36ページのパンフレットがついてまして、
その冒頭に、説明書きがあります(^^)
あれこれ引っ張り出してくるより、ここはそれを拝借して

「読本」とは、江戸時代後半期に、江戸・大阪・京都といった大都市のみならず、北は松前から南は薩摩に至るまで、全国規模で流通し、多くの読者を獲得した、本格的娯楽小説で、小説年表類には800点ほどが載せられています。
寛政の末(寛政12年が西暦1800年)を境に前期(初期)・後期に分けられ、初期読み本は上方の都賀庭鐘・上田秋成を代表者とする短編奇談集が中心、後期は江戸の山東京伝・曲亭馬琴を代表格として、長編歴史小説が中心というのが文学史の常識ですが・・・(後略)

と、ありましたが・・・ん〜・・・
都賀庭鐘・上田秋成といわれると、これは「白話小説」の系統で、これも「初期の読本」と言われると、へぇ!!の世界です。
特に上田秋成の「雨月物語」などは、
「全編殆どシナ文献に拠り所を発見できる(小西仁一著「日本文学史」)」―この出典思い出すのに苦労したんだ!!)
という一文が頭に残っていたので、探しまくったら、
そこにも↑「『雨月物語』は、初期読本と呼ばれる種類の作品に属する。」と、ありました。
ガ〜ン!!
ナニ覚えてんのよ!おばさん!!
で、ついでなので、↑の小西先生の「日本文学史」から、ちょっと拝借して

文章中心の読本に対して絵を中心とした草双紙もある。これは、読本よりもずっと低度の庶民的よみもので、表紙の色によって赤本・黒本・青本などと呼ばれる。おもに子ども相手の作品だが、安永初年(1775)から文化初年にかけて、更に黄表紙が現れた。これは大人のよみものである。その黄表紙を何冊か合綴して、中篇から長篇へと進めたのが合巻で、文政四年(1807)ごろから始まり明治に及ぶ。

ということになります。
つまり、私は「読本は字中心の草双紙と絵中心の黄表紙になる」と記憶していたのですが、とんだ勘違いM(__)M

で、まあ、能書きはその辺にして、
今回の出典品はみんな大変きれいで保存状態も最高品、ということでしたが、本当に綺麗です。
痛みを感じさせるもの、破れや汚れもなく、よくぞこれほど、というほどでした。
読本といえども、見る側にすると、やはりその挿絵の美しさが見所で・・・中味は一々読めるわけではありませんし(^^ゞ

そうすると馬琴の「椿説弓張月」の挿絵が葛飾北斎だとか、
「南総里見八犬伝」を歌川国貞だけでなく渓斎英泉が描いている、というのがみどころで、特に英泉の八犬伝はビックリでした(^^ゞ

山東京伝では、「京伝店引札」という、今で言う宣伝広告ですね。
ちゃんと読んでこなかったら、後でこの資料館の資料を見たら「忠臣蔵かへ名づくし」になってるの・・・
もう少しちゃんと見てくればよかったです(^_^;
「蝸牛」の画賛は以前どこかで・・・出光あたりかな・・・見た事があるような(^^ゞ

上方には「絵本もの」というジャンルもあるようで、これは「絵本忠臣蔵」「絵本太閤記」「絵本曾我物語」・・など、
歌舞伎ネタというか、浄瑠璃ネタのものが多いようです。

江戸の読み本では「梅之与四兵衛物語梅花氷裂」というのが山東京伝著、歌川豊国画でありました。
「梅の由兵衛」はけっこう有名な主人公ですが、為永春水の作り出した主人公と思ってました。
そしたら、その為永春水は二世南仙笑楚満人の名で「梅之与四兵衛/物語後編、梅花春水」という題名で書いてます。
なんでも山東京伝に私淑していたそうな(^^)

「<椀久/松山>柳巷話説」というのが例の椀久・松山でこれは馬琴なの?!絵は国芳でした。
「三七全伝南柯夢」が同じく馬琴だそうで、これもへぇ!!でした。絵は北斎です!!
「松染情史秋七草」も馬琴が描くお染久松の世界ですってよ(^_^;
みんな原作を潤色・脚色して出版するのです・・・この辺は凄いよねぇ!!

・・・というわけで、大変面白かったです。
最後に、これは、当日全然気がつかなかったのですが、今この資料を読んで発見したのが・・・m(__)m
「<芳薫/巧話>好文士伝」という為永春水著、渓斎英泉画の大本五巻五冊というものですが、これが、
「近頃の読本は筋立てがくだくだしく・・・」とあからさまに馬琴に対抗意識を燃やしている物らしいのです。
まあ、結局は挫折しちゃうらしいのですが・・・文士の世界にも物語はあるものですねぇ(^^ゞ