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2007年


1月10日(水)

有元利夫展
―― 横浜そごう美術館――

有元利夫展に行って来ました\(^^)/
相変わらずの人気のようで


初めて有元利夫の作品を見たのは 2003年1月9日でした。
それまで全然知らなかったのに一目惚れでした(^^ゞ
でー、なかなか見るチャンスがないので、
三番町ギャラリー・小川美術館という画廊に見に行くしかないかな、と思っていたところでした♪
↑ここは弥生画廊という画廊らしいのですが、有元作品をたくさん所蔵しているらしいのです。
今回発見したのですが、ここのオンラインショッピングのコーナーに行くと、有元作品の色々を見ることが出来ます(^^)
勿論克明な作家履歴と製作履歴なども見られるので、興味のある方にはお奨めです。

でー、今回は、そちらの協力、ということでかなりの点数―全部で130点―が集まりました。
私も、前回買い損なった画集を是非GETしたいと(前回は売り切れ!)、
期間中の早めに行くつもりで、去年から鼻息荒くスタンバイしてました(^_^;

もう〜よかったです(^^)
今回は彼の好きなピエロが二点しかなくて、祈りと雲と翼のイメージでした。
(後で気づいたら、素描・版画・立体の方に数点アルルカンがありましたm(__)m)

色調はいわゆる有元カラーのパステル調ですが、そこになんともいえない深みと哀しみと
癒し(いま、癒しというと、あまりにもアバウトですが)・・・単なる安らぎでない安らぎが感じられます。
複雑な色合いが重ねられています。

金粉も巧みに使われて、光の動き―存在を効果的に演出していました。

前回の観覧記では、

ドラマというか劇場的な雰囲気が好きらしく、劇場的シチュエーションをテーマにしたものが目に付きました。
後、手品ね。ドラマも手品のひとつなのかもしれないし、手品もドラマなのかもしれません。
絵の中の登場人物は、常に一人、というのが特徴的で、
それは、ご自分の解説にもありましたが、
「絵の中に、人を一人しか描かないのは、人と人の関係を描きたくないから。自然と人間との関係だけでいいと思うから」
ということでした。
私は、「天・地・人」だと感じたんですが・・・つまり、これもドラマツルギーの一種だと思ったのですが(^_^;

と、書いたのですが、今回は天・地・人というより、けっこう人間臭く感じた、というのは、
展示作品の違いや(同じ物も勿論ありましたが)展示の仕方の違いも含めて、
私自身の感覚の違いもあるのかな・・・と、
その前回の観覧記を読み返して自分で考えました。

素描・版画もあり、立体もありました!
これが意外によくて・・・彫刻ではなく「木彫り」と言う感じだったり、乾漆だったり、陶製だったり、面白かったです。

絵画で見る画像がそのまま立体化されているような感じですねぇ・・・よく考えて作ったなぁ、という気がしました。
絵画では表しきれない思いがあったんでしょうけど、
やはり「面白い」ということが先にたってしまうのは、私の鑑賞力の限界なのかな(^_^;

最近の私はけっこう感受性が鈍っているように思います。
いろんな生活感の感受性だけがキリキリと研ぎ澄まされると、そのぶん、芸術的な感受性は鈍くなります。
あくまで、私の場合、ですけど・・・。

「金彩」の効果では、「流れ星」と言う作品の彗星の尾が引くような輝きが素敵でした。
「一人の夜」という絵は、ふと、高島野十郎の「月」を思い出しました。
あちらは無人ですが、こちらは人が一人描かれています。色調も全く違いますが何となく孤独という連鎖で思い出したのかも。
「雲を創る人」というのは、誰のこと?自分の事なのかしら・・・キャンバスに空の雲を切り取ったように、
或いは鏡に雲を映しているように・・・なんとなく空への憧れと、空を飛べない寂しさがあるような気がします。

珍しいことに、リアルな婦人像が二点。片方は、本当に有元夫人で「容子像」という題で、
キャンバスに向かって絵を描いている像です。
もう片方は「追憶」という婦人像で、じっと掌を見ています。まあ、これはリアルとは言い切れないかな・・・。
でも他の絵に比べるとリアルですね。

もっとも「リアル」って何?と問われれば、「リアル」に描くことがテーマをリアルに現すとは限りませんから(^^ゞ

「素描」は、単にデッサンというモノクロの世界ではなくて、淡彩の着色があったりします。
あれの下絵だな、とわかるデッサンもありますし、直結していなくとも、あの絵に結びついたであろう、と感じさせる物もあります。
素描ですから、題がついているわけではありませんが、やはり、それぞれにちょっとしたテーマを感じさせます。
有元氏は「巧いデッサンではなく、良いデッサン」を目指していたそうです。

「版画」は、有元氏の絵画に別の命を吹き込んでいるようです。
有元ワールドに違いはないけれど、ちょつと強い線になるのは致し方のないところ、であると同時に
別の魅力も見せています。
同じシチュエーションの絵画も色彩も、もっと人間臭くなります。
もしかして、今回、私がこの展覧会を人間臭く感じた、というのは、わりと、この印象がつよかつたからかも(^_^;

立体は、どれも、今にも動き出しそう、というよりは、今動いていたのに、ふッと、私が見てしまったために、
済ましこんでそのまま動きを止めてしまった、という感じがありました。
いいよ、私はこっち向いてるから・・・と心の中でブツブツ言いながら視線を逸らして、
さっと振り向くと、またさつきのようにパッと動きを止めたようです(^_^;

フン、もう知らない。さよなら・・・
そう言って帰ってきたような気がします(^^ゞ

図録を今見ると、あれ?動いてないんだ!と、不思議に感じます。