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12月28日(火) 「六条御息所−1」六条御息所の社会的地位

12月はなんと忙しい!日にちが経つのがまるで特急列車!いや、新幹線です!

さて、六条御息所、彼女について、私が抱いているイメージとしては、
まず、身分(地位)としては、あの時代、考えうる最高貴族の家柄であろうということ。
彼女は(桐壺帝の)先帝の東宮妃であります。
ま、東宮ですから、正式に立后していないかもしれないが、桐壺帝自らが
「故宮のいとやむごとなくおぼし、時めかしき給ひしものを、軽々しうおしなべたるさまにもてなするが、いとほしきこと。斎宮をも、この御子達のつらになむ思へば、いづかたにつけても、おろかならざらむこそよからめ。」とおっしゃいます。

玉上琢也氏の系図でも、桐壺帝とは異腹か同母かは分かりませんが、兄弟として載っていますので、そう考えて良いと思われます。その方が東宮にも立たれたものを何をトチ狂ったか東宮を退かれてしまったらしいのです。原因は不明!ま、世をはかなんだのか、夭逝したところをみると病弱でもあったのか?(2000年5月23日、六条御息所-10参照)
その前坊(前東宮)が大切にも思い寵愛深かった、と帝位に立った兄弟たる桐壺帝が言い、更に、
斎宮の姫宮に対しては自分の御子たちと同列にも思っていらっしゃると言うのですから、六条御息所自身の宮中での地位にもそれなりのものがあったことが伺えます。他に女御がいたとという記述はありませんが、いたとしても、圧倒的優位に立つ女御ではあったでしょう。

そして、それを裏打ちするのは、「賢木」での斎宮の伊勢下向に伴う参殿で、
「父おとどの、限りなき筋に思しこころざして、いつき奉り給ひし有様かはりて、末の世に内を見給ふにも、もののみ尽きせず、あはれにおぼさる。」という一文があります。
勿論、大納言家から更衣として上がった桐壺更衣(御息所)の例もありますが、彼女自身、帝位についた「夫の兄弟」から、こういう大事な扱いを受けるだけの人格と家柄を背負っていたと思うのです。
当然「父おとど」というのは、葵上の父左大臣の前任者、もしくは則闕の官たる太政大臣であったかもしれません。母親は大宮のように何代か前の皇女ということも考えられます。
それゆえにこそ、彼女自身の美貌と才知を当然のように「限りなき筋に思しこころざして」当然の参内をし、当然のようにときめいていたのでしょう。
そして、ここにこそ、六条御息所の憑霊現象の源があるように思うのです。

瀬戸内寂聴氏の「わたしの源氏物語」の中で「東宮が夭逝しなければ、当然次の皇后の位が約束されていたのだ。」という一文があります。
私には、これが六条御息所の悲鳴にならぬ悲鳴!彼女自身も知らぬ力で彼女を突き動かすエネルギーの源だったのではないかと思っているのです。

そうそう、ちょつと面白い比較ですが、親も夫も亡くした後でも、六条御息所は、広大な屋敷や美しく心利いた女房達を集め、風雅の極致、という生活をしているわけです。
それだけの才覚、つまり経済感覚というか、経営感覚も鋭い独立した女性であったわけです。

ところが、彼女に取殺された、と思われる葵上、夕顔、紫上、尼にされちゃう女三宮などは、親掛かりだったり、男に頼って生きていくタイプだったり、要するに自立していない女だと思うのです。
紫上は、この頃では、源氏に対して慈母のようになつて大きく包んでいた、という意見が多いし、私もそれに対しては、満更反対でもないのですが、では、紫上は自立していたか、といえば、違う、と思っているのです。
彼女については「紫上の章」で詳しく述べたいと思うのですが、彼女は源氏の半身であって、お互いもたれあって生きている、と思っているのです。
紫上は源氏の流謫中、二条院の留守宅を預かって守ります。それを守りきる才覚はあったわけだし、当然地券などは、彼女の預かるところとなっていたわけです。だから、その時点で、紫上は源氏から自立しようと思えば出来たはずなのです。ところが、自立しないのですよ。何も分かれろというのではありませんぞ!精神的に、ね。

それに比べて、本来親掛かりのはずの明石御方の気丈なこと!この人は最初から最後まで自立しっぱなし!源氏なんて明石一族栄達の駒にしかすぎない、と思ってるのじゃないか、と思ってしまうほどです。
だからこそ、超自立型の明石御方が源氏の子供を産むのに取殺されないのだと思うのです!と、これは冗談。

まあ、夕顔を除いて取り殺されるのは、源氏の正妻(紫上は準正妻って所ですが)たちですから。それにしても、源氏の大本のマドンナ藤壺にも祟らない!彼女も皇女のわりにはえらく自立していた女君でしたからね・・・。藤壺と明石!ホントに自立した女たちには祟らないのかもしれません。

ちょっと、余計なところまで書いてしまったでしょうか。これについては、また章を改めて「六条御息所の憑霊現象」ということで書きたいと思っているのですが・・・

まず、次は「源氏との出会いと別れ」について書きたい、と思っています。
そして、「源氏の人生との関わり」「六条御息所の憑霊現象」「いかに彼女は愛したか」・・・なんて項目挙げといていいのでしょうか!?
もっとも、そうでもしないと、自分でもどこから書いていいのか納まりがつかないのです。あんまり思いが深すぎて、困っちゃう!?



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